芸能事務所による「移籍制限」に独禁法違反の恐れ 今後の展開も弁護士が解説

日本エンターテイナーライツ協会の共同代表理事を務める河西邦剛弁護士が解説。


 

■「労働者」でも適用除外事由にならない

ステージ
(razihusin/iStock/Thinkstock)

実務的には、タレントが労働者であることを前提に裁判所に未払賃金訴訟を提起した場合であっても、同時に公取委に対して事務所の独占禁止法上の優越的地位濫用を主張することができるとなります。

検討会が始まった当初は「フリーランス(芸能人)は労働法の守備範囲か独占禁止法の守備範囲か不明確であり、いわゆる法の谷間になっていることが問題だ」という議論もありました。

しかし、今回の報告書では「労働者」であるとしても同時に独占禁止法の適用もある場合があることが明言され、タレント側が労働者としての側面と事業者としての法的保護を受けることが可能になったのです。


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■芸能事務所の投資回収にも留意

芸能事務所にとっての投資の回収という側面は、必要不可欠な要素です。この要素を無視すれば芸能事務所は存続が困難になります。

芸能事務所にとって「タレントは商品」であるという側面は、どうしても否めない要素です。問題は、「投資回収との調和」であり「芸能事務所の投資の回収に必要な期間、売上の線引をどうするか」です。

ここはなかなか難しく、「投資回収に十分な期間は◯年」と断定することはなかなか困難です。芸能事務所がどの程度費用をかけたかなど、具体的ケースを前提にした判断になるでしょう。

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■タレントへのネガキャンにも一定の配慮
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