手つかずの自然に囲まれた秘境秋山郷の玄関口 雪も水も豊かな環境で醸される『霧の塔』

「米作りを続けるために」と農家たちがつくった酒蔵が前身となっている。

2018/02/21 21:00


 

■米を作り続けるため…と考えた

霧の塔

津南醸造の蔵職員は、製造職も事務職も、すべて地元の住人。一部の年間雇用を除いて夏は酒米「五百万石」を主体として作る農家だ。

農業振興のために、農協が地元自治体に働きかけて設立した酒蔵。 それは、この酒蔵が創業に遡る。

終戦後の混乱から一転、高度成長期へと突入した時代に、若者たちは金の卵と呼ばれて地方から都市部へとなだれ込むように移動していった。

「会社員」「サラリーマン」になることが憧れだった時代。「これからはさらに農業人口が減る、米を食べる人が減る」と、危機感を覚え、農業を支えるために作られたのがこの前身となる酒蔵だった。


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■ここで酒造りを覚えて杜氏に

霧の塔

現在、酒造りを任せられているのは、取締役杜氏の滝沢昌哉さん。会社が設立されたと同時に入社。先代杜氏のもとで酒造りを覚え、十数年前に先代が引退する直前には、雑務に忙しい頭に代わって、杜氏のすぐ下で働いていたという。

そのため、先代の引退とともに杜氏に昇格。以来10年、若い酒蔵ながら数々の賞を受賞 。

「とくに酒造りに興味があったわけでもないんです。むしろ、あまり飲んだことがなかったくらい。まだ、20歳過ぎたくらいですから、飲んだこと自体がなかった。仕事も地元十日町の会社で事務職でした」


と、当時のことを話してくれた。 ここが開設されるからということで、普通の就職活動として選んだ酒蔵。

「入社が決まって、県内の酒蔵で研修させてもらって、一通り作業工程を見せてはもらったという感じです。今だから言えますが、とくに好きで入ったというほどではなかったし、あまりよくわかっていなかったと思います」

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■ものづくりのやりがいに気づく
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