酒米の名産地・和島で地元に愛される酒蔵 哲学者の名にちなむ『和楽互尊』の歴史
少し難しい名前だが、かつての蔵元の親交からついた名だとう。
山並みに入り込んでいくように山深い地。しかし、道はほぼ平らで決して広い土地ではないが、その傍らにはどこまでも田んぼが続く。旧和島。ここは、新潟でも知られた酒米の産地だ。
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■銘柄に思いを込めれば発信ツールに
お酒の名前は多種多様だが、やはり親しんでもらいたいと、綺麗な字、綺麗な響き、縁起の良い名前、地元の名士の名前などが多くなるもの。
難しそう堅苦しそうな銘柄をあえてつけるには、それなりの確固たる思いがある、ということに他ならない。 「和楽互尊」。
その字のごとく、「お互いに尊重しあえば、和やかに楽しく」いられる、という意味なのだそうだが、お酒を知る前からこの言葉を知っていた人はいるだろうか。
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■地元の哲学者に由来
命名者は池浦酒造の先々代。長岡の哲学者で、互尊精神を提唱し野本互尊と自らを名乗っていた、野本恭三郎氏。先代がその精神に感銘を受け、親しくさせていただいていたのだそうだ。
互尊を酒の銘柄にするにあたって、助言を得たのが、漢学者の安岡正篤氏と、先々代の高い志、豊かな交友関係が窺われる。 「その精神を酒造りにも活かしていきたいと、祖父が命名したのです」と取締役社長の池浦隆太郎さん。
とかく酒造りは、人間があれこれ操作できるものではなく、微生物の働きを尊重して、必要に応じて、可能な範囲で環境を整えるだけ、と言われる。思うところは一緒なのかもしれない。