『夏子の酒』の舞台 幻の酒米「亀の尾」を復活させ日本酒の未来を見つめる久須美酒造
モーニングで連載されドラマにもなった『夏子の酒』では「龍錦」という名前で復活劇が描かれている。
酒蔵を訪ねると杜氏や蔵人にインタビューすることがある。なぜ、酒造りをしたいと思ったのか、と。 彼らはたいていこう答える。「夏子の酒に影響されて」「夏子の酒に感動したから」と。
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■多くの蔵人を生んだ『夏子の酒』
『夏子の酒』とは、1988年から1991年にかけて講談社の雑誌『モーニング』に連載された尾瀬あきらの漫画。造り酒屋を舞台に「幻の酒米」を復活させる物語で、酒造米をテーマに日本のコメ作り・農業問題をクローズアップ。
同時に日本酒業界の抱える構造的問題も明らかにした。 1994年にはテレビドラマ化されて、世間に広く知られるところとなった。ドラマを見て、日本酒を飲んでみたいと思った若者や女性たちも少なくない。
この造り酒屋というのが、周知のように「清泉」を醸す久須美酒造である。昭和初期まで日本酒に使われていたコメ「亀の尾」を3年かけて復活させ、日本酒『亀の翁』を完成させた事実をモチーフに描いたのが『夏子の酒』だ。
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■代表銘柄『清泉』の名は自家湧水に由来
蔵があるのは長岡市の旧和島村。名水の里として知られる。
「1985年に環境庁が全国の美味しい水を調査した際、新潟名水36選のひとつに当社の仕込み水が選ばれました。現在は65ヶ所が指定され、長岡市は5ヶ所。そのうちの2つが和島地区にあります」と、7代目蔵元で代表取締役社長の久須美賢和さんは紹介する。
敷地内にある井戸から湧き上がる水は、樹齢200年から250年ともいわれる老杉に覆われた裏山が水源。きれいに澄んだ軟水である。
「昔から当家は清水屋の屋号で呼ばれ、自家湧水に恵まれていました。代表銘柄『清泉』の名もこの自然水に由来します」
この裏山は久須美家の所有。酒造りに必要な良質な水は、山の杉を育て守ることが不可欠で、代々の杉山との深い関わりによって名水は育まれたのだろう。