「無理やりキス」は強制わいせつでも「ハグや手つなぎ」は? 境界線を弁護士に聞いた
著名な芸能人も逮捕されて注目の「強制わいせつ罪」。「無理やりキス」は唇以外でもNG? ハグや手をつなぐのは?
芸能人が、「強制わいせつ罪」の容疑で書類送検されたことが報じられた。また、官僚トップによる女性記者へのセクハラ問題も、大きな波紋を呼んでいる。
絶えない性関連のトラブルだが、「強制わいせつ」と判断されるのはどのような行為からなのか、男性のみならず女性も気になるのではないだろうか。
そこで、しらべぇ取材班は、レイ法律事務所の松下真由美弁護士にその境界線について話を聞いた。
■「強制わいせつ罪」とは
まず、強制わいせつ罪について、松下弁護士の解説は…
松下弁護士:強制わいせつは、被害者の意に反してわいせつな行為を行うこと。強制わいせつ罪は、個人の性的自由を守るために定められています。ですから、「被害者の同意の有無」が問題になります。
法律では「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」と定められています(刑法176条)。
被害者が13歳以上の者に対しては、暴行・脅迫が用いられる必要があり、被害者の真意に基づく承諾がある場合には、強制わいせつ罪は成立しません。
他方で、被害者が13歳未満の場合には、暴行・脅迫がなくても、被害者の承諾があっても犯罪になります。
13歳未満の場合には、わいせつな行為の意味を正しく理解できず、同意をする能力がないと判断されるからです。強制わいせつが成立するかは、
①被害者の年齢
②被害者の同意の有無
③わいせつ行為の態様
がポイントといえます。
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■わいせつ行為の態様について
では、「暴行・脅迫」とは、どのようなレベルのものなのだろうか。
松下弁護士:強制わいせつ罪が成立するための「暴行・脅迫」の程度としては、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度、つまり軽微な程度でよいとされています。判例も「力の大小強弱は必ずしも問わない」としています。
殴ったり蹴ったりするのは当然ですが、体を押さえたり、衣服を引っ張ったりすることも暴行に含まれると解釈されています。
また、「わいせつな行為」の定義についても聞いてみた。
松下弁護士:裁判所は、「性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ一般人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいう」としています。
簡単にいうと、普通の人であればわいせつだと感じて嫌がるような行為をいいます。例えば、陰部に手を触れる、自分の陰部を押し当てる、女性の胸を揉む、裸にして写真を撮る、キスをするなどの行為は、わいせつな行為にあたります。