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「無理やりキス」は強制わいせつでも「ハグや手つなぎ」は? 境界線を弁護士に聞いた

著名な芸能人も逮捕されて注目の「強制わいせつ罪」。「無理やりキス」は唇以外でもNG? ハグや手をつなぐのは?

社会

キス

(Vasyl Dolmatov/iStock/Thinkstock)

芸能人が、「強制わいせつ罪」の容疑で書類送検されたことが報じられた。また、官僚トップによる女性記者へのセクハラ問題も、大きな波紋を呼んでいる。

絶えない性関連のトラブルだが、「強制わいせつ」と判断されるのはどのような行為からなのか、男性のみならず女性も気になるのではないだろうか。

そこで、しらべぇ取材班は、レイ法律事務所の松下真由美弁護士にその境界線について話を聞いた。

 

■「強制わいせつ罪」とは

まず、強制わいせつ罪について、松下弁護士の解説は…

松下弁護士:強制わいせつは、被害者の意に反してわいせつな行為を行うこと。強制わいせつ罪は、個人の性的自由を守るために定められています。ですから、「被害者の同意の有無」が問題になります。

 

法律では「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」と定められています(刑法176条)。

 

被害者が13歳以上の者に対しては、暴行・脅迫が用いられる必要があり、被害者の真意に基づく承諾がある場合には、強制わいせつ罪は成立しません。

 

他方で、被害者が13歳未満の場合には、暴行・脅迫がなくても、被害者の承諾があっても犯罪になります。

 

13歳未満の場合には、わいせつな行為の意味を正しく理解できず、同意をする能力がないと判断されるからです。強制わいせつが成立するかは、

①被害者の年齢

②被害者の同意の有無

③わいせつ行為の態様

がポイントといえます。

 

■わいせつ行為の態様について

では、「暴行・脅迫」とは、どのようなレベルのものなのだろうか。

松下弁護士:強制わいせつ罪が成立するための「暴行・脅迫」の程度としては、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度、つまり軽微な程度でよいとされています。判例も「力の大小強弱は必ずしも問わない」としています。

 

殴ったり蹴ったりするのは当然ですが、体を押さえたり、衣服を引っ張ったりすることも暴行に含まれると解釈されています。

 

また、「わいせつな行為」の定義についても聞いてみた。

松下弁護士:裁判所は、「性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ一般人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいう」としています。

 

簡単にいうと、普通の人であればわいせつだと感じて嫌がるような行為をいいます。例えば、陰部に手を触れる、自分の陰部を押し当てる、女性の胸を揉む、裸にして写真を撮る、キスをするなどの行為は、わいせつな行為にあたります。

 

■無理やりキスはどこでも犯罪? ハグや手つなぎは?

今回の報道では「無理やりキスしようとした」と報じられているが、キスは唇同士だけでなく、おでこや頬、手の甲や首筋など、さまざまな部位にする行為。どこにキスするのが強制わいせつになりうるのだろうか。

また、手をつなぐくらいでも犯罪に問われるリスクがあるのか、聞いたところ…

松下弁護士:キスをした部位については、基本的には「唇にキスをした事案」が強制わいせつとして問題になると思われます。

 

また、強制的だとしても「手をつなぐ行為」では、強制わいせつとまでは言えないと思われます。

 

では、欧米では挨拶にもなっているハグは、どうなのだろうか。

松下弁護士:単なる抱擁はわいせつ行為には該当しないと思われます。もっとも、体を密着させて陰部を押しあてたと認定されれば、それが強制わいせつに該当する可能性も十分あると思われますが…。

 

ただ、たとえば着衣の上から女性の臀部を撫でた行為について、わいせつ行為と言っている裁判例もあれば、そうでないという判断をした裁判例もあります。

 

密室で行われたとか、わいせつ行為の時間の長さとか、そのときの状況によっても認定は代わってくるので、部位だけで一律に判断することは難しいでしょう。

 

■加害者・被害者にならないために

男性・女性ともこうしたトラブルを避けるためには、どのような配慮が有効なのだろうか。

松下弁護士:強制わいせつの事件では、相手の同意があったと勘違いしてわいせつ行為をしてしまった、というような事件が多くあります。勘違いであっても、同意なく行われたわいせつ行為については、強制わいせつ罪が成立します。

 

少しでも相手が嫌がっていると思ったら、決してわいせつ行為を行ってはいけません。また、例えば上司や先輩に対しては、相手もはっきりとした拒否をすることが難しい場合がありますので、注意が必要です。

 

他方で、加害者の側で、同意があったと勘違いしてしまってもおかしくない状況であったことが証明できれば、罪に問われない場合もあります。

 

同意があったかどうかは、被害者の事件前後の行動等によっても判断されますので、被害者とならないためには、きっぱり拒否をすることが大切です。

 

また、密室に二人きりになるなどの状況は、できるだけ避けるようにしましょう。それでも被害に遭ってしまった場合には一人で我慢せず、速やかに警察や弁護士に相談するようにしましょう。

・合わせて読みたい→【法律コラム】その「ムラムラ」が命取り!夏に多い性犯罪と最新の手口を調べてみた!

(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/レイ法律事務所 松下真由美弁護士

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