大人のクズかわいさがたまらない 渋川清彦主演『榎田貿易堂』
ユルさが魅力の会話は、主演の渋川清彦はじめ森岡龍、伊藤沙莉、滝藤賢一、余貴美子ら芝居巧者たちの間が絶妙
今日9日より、映画『榎田貿易堂』が新宿・武蔵野館を皮切りに、公開をスタートさせる。
監督は、『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』『大人ドロップ』『笑う招き猫』など、話題作を次々と公開する飯塚健。主演は、現在放送中のドラマだけでも『崖っぷちホテル』(日本テレビ系)『モンテ・クリスト伯—華麗なる復讐—』(フジテレビ系)に出演し、ドラマや映画に欠かすことのできない役者・渋川清彦。
群馬県渋川市出身の同郷タッグの二人が、地元を舞台に作り上げた作品だ。
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■会話の間が絶妙
メインとなるキャストには、主演の渋川をはじめ、森岡龍、伊藤沙莉、滝藤賢一、余貴美子ら、芝居巧者たちが並ぶ。
親密とは少し違う、でも気のおけない、だけど踏み込み切らない関係が醸し出すユルい雰囲気――その登場人物たちが繰り広げる「これといって、実のあるわけではない話」。その会話の間がとにかく絶妙で、“ずっと聞いていたい”気持ちになるのが、大きな魅力。
そんな作品のあらすじは…
群馬県にある開業四年目のリサイクルショップ・榎田貿易堂。
「扱う品はゴミ以外。何でも来いが信条さ」という店主・榎田洋二郎(渋川清彦)のもとには、店の商品同様に様々な人間が集う。榎田貿易堂でバイトする人妻・千秋(伊藤沙莉)、同僚のクールな青年・清春(森岡龍)、終活中の客・ヨーコ(余貴美子)、東京から出戻った自称スーパーチーフ助監督・丈(滝藤賢一)。各々が小さな秘密を心に抱えながらも、穏やかな日々を送っていた。
ある夏の日のこと、いつものように彼らが集う中、店の看板の一部が落下する。「これ予兆だよ。何か凄いことが、起きる予兆」と言う洋二郎の言葉通り、それぞれの抱える悩みや問題が、その日から静かに、だが確実に動き出す……。
夫との関係に寂しさと不安を抱く千秋、過去から抜け出せず苦しむ清春、新たな恋人との生活と人生のけじめに揺れるヨーコ、東京での映画作りの日々と故郷での生活に迷う丈。そして、洋二郎の胸にも捨てられない想いがあった。
果たして5人は現在に「留まる」のか、それとも「やめる」のか……。
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■このままじゃダメだってことだけは
キャッチコピーの「ここままじゃダメだってことだけは、わかるっつうか」は、洋二郎のセリフのひとつだ。誰もが、そんな気持ちに苛まれて、焦燥感を覚えることがある。
若い時は「いつかこんな気持ちから、解放される」と思ったはずなのに、年齢を重ねても、ふと同じ思いを抱えていることに気づく。
でもそれは絶望などではなく、まだ何かやれる。まだ何かをやりたいと思っている自分に気づいて、ちょっとだけ元気になる瞬間になることも。
終盤、丈は決断したことを確認され、すごくカッコイイ言葉を返すのだが、それは登場人物たちだけじゃなく、きっと作品を観る多くの人たちの心に“すとん”と落ちてくる。
どのキャラクターも、ちょっとダメなところがあって、そういう“ちょいクズ”なところが、かわいらしくて愛おしい大人たち。
「今のままで、いいのかな?」と思いながらも、そんな自分に優しい気持ちになりたいなら、この作品はオススメだ。
監督・脚本・編集:飯塚健
出演:渋川清彦、森岡龍、伊藤沙莉、滝藤賢一、宮本なつ、渡邊蒼、三浦俊輔、駒木根隆介、キンタカオ、金子昌弘、諏訪太朗、片岡礼子、根岸季衣、余貴美子
©2017映画「榎田貿易堂」製作委員会
配給:アルゴ・ピクチャーズ
6月9日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開
(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)