「ハンバーガー20個一気食い」を強制 ブラック上司による「メシハラ」の実態

ブラック企業の恐怖は、食事やSNSなど身近で意外なところにも及ぶ。

2018/06/09 12:00


 

■SNSでの称賛を強制

ツイッターやFacebookにアカウントを持っている人は多いが、中には「会社の人とはつながりたくない」と考える人もいるはず。YM2315さんの上司は、まったく逆のタイプだったようだ。

「自己顕示欲と承認欲求に凝り固まった所長は、営業所員全員にSNSに加入させ、嘘偽りで塗り固めた己を称賛するように日々命じ、所長が気に入っている私が3日以上SNSを更新しないと、ありとあらゆる手段で私を罵倒しました」


結果的に体調を崩したYM2315さんは、会社を辞めることになる。

「睡眠障害になってしまい、私は営業所を辞めました。形でさえ引き留めることもされず、最後に秘密厳守の名のもとに『今後永遠に、どんな手段でも自分が受けたことを公表しない』という誓約書にサインを書かされて退職しました。


さらに言えば、その時、営業所長は手が痛いと言ってサインを書かず、自分の署名欄に、私に代筆をさせました。思い出しても苦しいです。涙が出てきます」


関連記事:「白紙の勤務表」で労基署の査察をパス 従業員を苦しめるブラック企業のトンデモ手口

 

■弁護士の見解は…

早野述久弁護士

あまりに異常な職場に感じられるが、このケースの場合どのような違法性があるのだろうか。鎧橋総合法律事務所の早野述久弁護士に聞いたところ…

早野弁護士:完全歩合制とピンハネの結果、YM2315さんの収入はほぼゼロとなっていたそうですが、これには最低賃金法違反の疑いがあります。


歩合制の場合、賃金算定期間(通常1ヶ月)の給料の総額をその賃金算定期間の総労働時間で割った金額(時給換算)が最低賃金を下回っていれば、最低賃金法違反となり、労働者は会社に対して最低賃金との差額を請求することができます。


各都道府県の最低賃金は厚労省のウェブサイトで公表されているので、最低賃金法違反が疑われる場合はチェックしてみるとよいでしょう。ちなみに現在の東京都の最低賃金は958円(時給換算)です。


また、投稿者が苦しんだ「メシハラ」にも大きな問題がある。

早野弁護士:また、YM2315さんが受けていたメシハラは、耳を疑うような異常なパワーハラスメントで、完全に違法です。このような異常な大食いをノリと称して楽しむ文化があったのかもしれませんが、少なくとも本人がやめてほしいと言った時点で即座に止めるべきです。


仮にその上司からYM2315さんへの暴力や社内出世や労働環境に関する何らかの脅迫が伴っていた場合には、単に民事上の損害賠償責任を負うだけでなく、暴力又は脅迫を用いて義務のないことを行わせたということで強要罪(刑法223条)に該当する可能性もあります。理不尽なことを要求して怒鳴る、罵倒することも当然パワハラとなります。


退職時に会社側が行った対応から、「違法性を認識していたのではないか」と早野弁護士は疑う。

早野弁護士:しかも、わざわざ退職時に守秘義務条項の入った誓約書にサインさせるということは会社としても上司の違法行為を認識していた可能性が高く、YM2315さんは雇い主である会社に対しても使用者責任(民法715条)、職場環境配慮義務違反により損害賠償を請求することができるでしょう。


このような異常なブラック企業に就職してしまったことは不幸としか言いようがありません。一日も早くYM2315さんの体調が回復するのを祈るばかりです。


このブラック企業エピソードは6月10日まで募集中だ。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク

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