サウナと水風呂で「我慢大会」のような訓示も 体をも蝕むブラック企業の恐怖

スーパー銭湯に連れていかれ、サウナと水風呂で社長訓示を行う会社が!?

2018/06/16 15:00

サウナ
(belchonock/iStock/Thinkstock/画像はイメージです)

勤めるほどに身も心も病んでいきかねないブラック企業。そのうちに感覚が麻痺してしまうのも、恐ろしい。

労働事件を扱っている弁護士を検索・連絡できるサービス「残業代・解雇弁護士サーチ」を提供する日本リーガルネットワーク社が募集した「ブラック企業エピソード」からとんでもないケースを紹介しよう。



 

■サウナで我慢大会のような訓示

ヤンクさんが勤務していたのは、ワンマン社長が君臨する地方企業だった。

「地方の畜産系の会社に在籍していました。社長がほぼ皇帝のような感じで、『葬式以外お前らは俺の奴隷だ』と平気で公言。教祖のように祭り上げられていたため、逆らうことや意見することは社員同士の愚痴でもご法度。


全体会議が土日を潰して毎月行われるため、休みは月に3日間のみ。会議も社長の鶴の一声で切り上げ、近くのスーパー銭湯へ集合。銭湯のサウナ内で社長の訓示が始まり、社歴の短いものほど熱いところへ座らせられる。弱音を吐こうものならサウナ後に水風呂に入らされ、社長の許可が出るまで出られない」


関連記事:新入社員の給与を天引きして全社員が飲み会 ブラック企業のあきれた非常識ルール

 

■社員から罰金や脱税疑惑も

さらに会社が従業員からお金を巻き上げるような事態も、しばしばあったようだ。

「会議でも、社長が少しでも気に食わないことがあれば罰金を徴収される(タバコを吸った、社員旅行先での金の使い方が気に食わないなど)。


会社創立記念で社員がカンパを出して記念品を作ろうとしたところ、社長の一声でおじゃんになり、『その代わりにボーナスを支給するのでその中の9割を寄こせ』とのこと。つまり支給全体分の所得税を払った挙げ句、社長個人は無税で寄付金をもらうというほぼ脱税」


関連記事:「親が死んでよかったね」 ブラック企業に寄せられた衝撃の体験談を弁護士が一刀両断

 

■労基に駆け込んでもあしらわれ…

体調を崩したヤンクさんは、結局会社を去ることになったが、悲劇はまだ終わらない。

「会社出張では、交通系に親族がいる場合は親族割引や優先搭乗を使わせて経費を浮かせ、親族にはお礼と称して取引先からタダでもらった物を横流し。最終的には例の社長訓示サウナでぶっ倒れて救急車で運ばれ、そのまま退職しました。


せめてものあがきで労基に行きましたが、けんもほろろ、『せめて就業規則を確認してこい』だけ。実際に確認しようとしても、『見せる必要はない』の一点張り。まだパワハラという言葉がなかった頃の話です」


関連記事:「子供が父と思ってない」「終業時間に海外からメール」 ブラック企業体験談がエグすぎる

 

■弁護士の見解は…

南谷泰史弁護士

違法のオンパレードにも見えるが、鎧橋総合法律事務所の南谷泰史弁護士に法的見解を聞いてみた。

南谷弁護士:ワンマン社長が法律も常識も無視した運営を行っていたようですね。それぞれ見ていくと、休みが月3日しかない点については、労働時間の上限を定める労基法32条や、週1日以上の休日付与を定める労基法35条等の違反が考えられます。


ただし、「畜産系」の意味が食品加工等ではなく畜産業である場合、労基法41条により労基法32条等が適用されないため、これらの規定違反は成立しません。


なお、その場合でも、雇用契約等で労働時間が決まっていれば、相当の残業代は請求できる可能性が高いでしょう。


さらにパワハラに対する損害賠償だけでなく、税金関係の法律にも抵触している恐れも。

南谷弁護士:サウナや水風呂の強制については、合理的理由がなく、パワハラに該当します。救急車で運ばれるなど具体的な損害も発生しており、損害賠償の対象になるでしょう。


次に、罰金については、就業規則等の根拠がなければ認められません。仮に、就業規則上の懲戒処分として行われていても、「旅行先での金の使い方が気に食わない」等の理由は合理的でないため、違法・無効となる可能性が非常に高いと考えられます。


ボーナスの9割を社長に払わされた点は、詳細が不明であり確定的な判断はできませんが、社長に申告外の報酬が支払われているとして、法人税法や所得税法の違反が成立する可能性があります。


南谷弁護士は労基署の対応に対しても怒りを隠さない。

南谷弁護士:このケースで労基署が対応してくれなかったのは誠に残念です。労基署は、労働者から申告があっただけでは調査義務を負わないため、労働者側が資料を集めなければならない場合があります。


もっとも、最近は、このケースに比べて、労基署が会社の呼出し等を積極的に行うケースも増えているように思います。なお、就業規則には従業員への周知義務がある(労基法106条)ため、従業員に就業規則を見せないのは違法であり、罰則も定められています(労基法106条)。


また、退職後でも、会社との間に法的な紛争がある場合、労基署への開示要請や、弁護士を通じての開示請求や証拠保全によって、就業規則を確認することが可能でしょう。


ブラック企業エピソードの募集はすでに締め切られ、今月末にも大賞が発表予定とのことだ。

・合わせて読みたい→「子供が父と思ってない」「終業時間に海外からメール」 ブラック企業体験談がエグすぎる

(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク

Amazonタイムセール&キャンペーンをチェック!

パワハラブラック企業弁護士社長サウナ我慢大会水風呂脱税労基
シェア ツイート 送る アプリで読む

人気記事ランキング