出勤すると3ヶ月「監禁」 『ブラック企業エピソード大賞』に選ばれた異常な会社の実態
時給120円台で1日20時間勤務を強いられたという。
■弁護士の見解は…
まるで社員を人間扱いしないようなとんでもないブラックぶりに、鎧橋総合法律事務所の南谷泰史弁護士も、怒りを隠さない。
南谷弁護士:凄まじいお話です。もはやブラック企業より、犯罪企業と呼んだほうが適当だと思います。このエピソードには多数の法的問題が含まれています。
違法な給与額の一方的減額(労働契約法9条参照)、最低賃金法違反、違法な長時間勤務(労基法32条違反)・休日勤務(労基法35条違反)、残業代未払い(労基法37条違反)、タイムカードの不適切な管理(労働時間の適正把握義務違反)、過労死や過労による病気を引き起こした健康配慮義務違反、退職の妨害などです。
いずれも重大な問題です。とくに、過労による病気や過労死という最悪の結果を引き起こしたことは言語道断です。
この経営者の態度・考え方にも南谷弁護士は疑問を呈する。
南谷弁護士:上記の法令違反の元となっているのは、経営者の誤った考え方でしょう。会社・経営者(使用者)と従業員(労働者)は、本来、対等な関係です。会社・経営者には、従業員に対する業務指揮権限がありますが、それはあくまで労基法等の法令及び雇用契約・就業規則等に基づく権限です。
それに反する部分については、何の権限もありません。法律や契約に基づいて初めて、経営者・上司として話すことができるのです。このような当然のことも理解せず、他者の権利を侵害している経営者は、経営者失格のみならず、市民失格であると思います。
関連記事:「サイヤ人は死にかけると強くなる」 ブラック上司の許しがたいトンデモ発言
■タイムカード改竄は大きな問題
国会では、モリカケ問題で「公文書の改竄」が与野党の論戦となったが、タイムカードの改竄も問題だ。
南谷弁護士:また、タイムカードを上司が自由に書き変えられたことも、非常に重大な問題です。
タイムカード等を用いた労働時間の適正把握義務(会社の義務です)の違反は、それ自体は大きな問題ではないように見えるかもしれませんが、過労死や病気を引き起こす超長時間勤務、残業代の未払い等の問題の基礎となっており、見過ごしてはなりません。
こうした企業においては、退職することを躊躇しないほうがいいそう。それは、法律でも認められている。
南谷弁護士:最後に、退職の妨害も非常に大きな問題です。本エピソードの環境に納得して働いていた方は皆無でしょうが、法令に反する主張で脅されたり騙されたりすることによって、強制的に働かされています。
退職に会社・上司の許可は不要です(民法627条1項前段等)し、このように生命・身体の危険がある場合や賃金の重大な未払いがある場合には、即座に退職して構いません(民法628条)。退職届の受理など不要です。
内容証明郵便やEメールなど記録が残る形で退職の意思を伝え、一刻も早く辞めるべきです。退職に関して会社・上司に脅されている場合には、早期の弁護士への相談を強くお勧めします。
・合わせて読みたい→「サイヤ人は死にかけると強くなる」 ブラック上司の許しがたいトンデモ発言
(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)