溶接作業の「マスク禁止」で顔が焼けただれ 危険すぎるブラック工場の悪どい手口
給与が約束と違うだけでなく、効率を過度に重視した恐るべき職場環境が…
■「マスク禁止」は極めて悪質
また、投稿者が「顔が焼けただれてしまった」という効率重視のための「マスク使用禁止」といった処置は、法的にもきわめて悪質なものだという。
③安全配慮義務違反(安全衛生法20条・21条等)について
早野弁護士:本件事案で最も悪質と考えられるのは、Atusiさんの勤務されていた企業の安全配慮義務を履行しないばかりか、安全を確保しようとする労働者の行為を妨害する点です。
法律上、一定の身体上の危険が伴う作業に労働者が従事する場合には、企業側はその危険を防止するための措置をとる義務があります(労働安全衛生法20、22、23、24条)。
Atusiさんの場合には、企業側は作業効率が落ちるという理由で、溶接作業に保護なしで作業させ、結果として、顔が溶接光による紫外線によって焼けただれるなどの被害が出ています。
また、納期に間に合わないという理由から、プレス機の安全装置を外し、Atusiさんの先輩が指を潰してしまうなど、考えられない事態が発生しています。
これらは本来、企業が負担すべき、労働者の健康や安全を配慮し危険が生じることを防止するという義務を履行しないという違法な行為です。
なお、作業効率は会社が設備投資等により高めるべきであり、企業の利益を守るために労働者を危険に晒すことは、大変に責任が重いものと言えます。
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■「労災かくし」は送検も多い
怪我をしてしまった先輩について、労災保険を使わなかったことは、刑事的な責任も問われることになる。
④労災事故の報告懈怠(労災かくし)について
早野弁護士:さらに、Atusiさんが勤務していた企業は、「Atusiさんの先輩が指を潰してしまった労災事故について労災保険を使わせずに隠蔽した」とのことです。
しかし、企業は、労働災害等により労働者が死亡又は休業した場合には、遅滞なく労働者死傷病報告等を労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働基準法施行規則第57条、労働安全衛生規則第97条)。
当該報告義務の懈怠は、「労災かくし」として刑事罰の対象となり(労働安全衛生法100条、120条)、労基署からも許しがたい行為として、多数の案件が送検されています。
このエピソードを「ブラック企業エピソード大賞」に投稿したAtusiさんは、自らのブログでもより詳細な体験談を紹介している。
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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)