入管法改正の強引な国会運営に野党反発 失踪者の時給は500円台が最多と判明

法務省が提出した資料の誤りが認められたが、強引な審議に疑問の声が上がっている。

2018/11/24 14:00



■今国会での成立に疑問も

階猛

国民民主党の階猛衆院議員は、

「新聞各紙の世論調査を見ても、この入管法改正について『今国会成立にこだわるべきではない』という回答が圧倒的に多い。


この新しい受け入れ制度の土台になっている技能実習制度、政府は『最低賃金以下』であることを理由に失踪した人は0.8%に過ぎないと言っているが、客観的に『最低賃金以下』であるかどうかは聴取票の別の欄にある労働時間と月給の数字から簡単に割り出せる。


我々が手書きで調べたものを集計したところ、『最低賃金以下』の方は7割を超えている。アトランダムに抽出してこうした数字であり、今の制度を土台にして新しい制度を作ることはありえないということがあらためて明らかになった」


と断じる。


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■聴取票をめぐって紛糾

黒岩宇洋

無所属の会の黒岩宇洋衆院議員は、「定例日以外での審議で、しかも参考人質疑については後日協議すると言ったまま何ら提案のないままいきなり22日にやると決められ、与党筆頭理事の平沢議員からは『準備しているのが当たり前だ』と言われた」と反発。

聴取票をめぐっては、これまで安倍総理も法務大臣も「失踪者が刑事訴追される恐れがある」ことを理由に公表を拒んできたが、

「事業者が最低賃金法違反で刑事訴追の恐れがあり、不法行為があったら当然告発義務があるにもかかわらずそれをしてこなかったことで入管当局も刑事訴訟の恐れがある。まるっきり逆の刑事訴追のおそれがあるから聴取票を出せなかったのだと疑わざるを得ない状況だ」


と指摘。

藤野保史

また、日本共産党の藤野保史衆院議員は、「個票が示しているものは今の法案審議の大前提」と述べ、最賃法の話以外にも、(失踪動機の理由として)「暴力を受けた」というチェックがないものでも「体力的にきつい」など同じような回答があると指摘。

「個票を見ないと分からない。もともと国会で与党も含めて付帯決議で求めたものであり、出さない理由はない。プライバシーには配慮して取り扱えばいい。出して当然のものだ」


などと強調した。


■時給500円台が最多

野党は失踪者から聴き取った個別の「聴取票」のうち、無作為に184人分を閲覧して、複写が禁じられているために書き写しして、結果を集計した。

月収と一週間の労働時間が記された176人分について、時給を試算したところ、最低賃金が全国で最も安い鹿児島県の761円を上回った人はわずかに33人だと発覚。

東京新聞が176人の時給を金銭別に分類したところ、500円台が52人と最多で600円台(34人)とあわせて約半数を占めていることが分かった。矢真央議員は衆議院法務委員会で「(2870人全体について時給を計算すれば)最低賃金割れの人が7割、8割を占める可能性が高い」と推論した。

与党は27日に入管法改正案を27日に通過させる見通しだ。国家を揺らがしかねない問題をスピード決着しようとしている。はたして、国民の評価はいかに。

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(取材・文/France10・及川健二

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