雇用保険、有給、労災も一切ナシ ブラックすぎるパチンコ景品交換所の従業員が悲鳴
パチンコにはつきものの「景品交換所」。法律で認められている仕事ではあるものの、その勤務形態は恐ろしく時代錯誤なところもあるようだ。
■弁護士の見解は
採用条件と大きく異なる勤務状況で苦しんでいるヨッシーさんだが、この会社にはどのような問題があったのだろうか。鎧橋総合法律事務所の早野述久弁護士に聞いたところ…
早野弁護士:日本の多くの職場においては、ヨッシーさんのように、勤務する会社から早出のサービス残業を要求されることが比較的多いのではないでしょうか。
しかし、本来の始業時間より前に出勤するように要求しているにもかかわらず、その分の賃金を支払わないことは、到底許されるものではありません。また、雇用時にきちんと労働保険に加入しない雇用者が多くいますが、これも重大な問題です。
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■早出や終業後などの賃金の不払い
早野弁護士:会社が早出を命じたのにも関わらず、その分の賃金を支払わないのは、賃金の未払いであり、労基法24条違反となります。また、休憩の事実がないにも関わらず、休憩したものとしてその賃金を引くことは当然許されず、やはり賃金未払いとなります。
さらに、顧客に対応するため、就業時間を超えて業務を行っているのであれば、その時間がたとえ5分といった短時間であっても、会社は賃金を支払う義務があります。この点でも、賃金未払いによる労基法24条違反があったといえるでしょう。
なお、採用時に提示された条件と、実際の勤務条件が異なる場合には、労働者は即時に契約を解除することができます(労基法15条2項)。
仮にヨッシーさんが、採用時に始業時間は11時からと説明されていたにもかかわらず、入社後に10時20分からの出社を要求されたということであれば、労働条件が相違するものとして雇用契約を解除することもできたでしょう。
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■人を雇うときのルールを守らない非道さ
早野弁護士:雇用主は、労働者を雇用する際には、雇用保険、労災保険に加入する義務があります(雇用保険法5条、労災補償保険法3条)。
これらの保険は、労働者の権利を守るために、雇用主に加入を義務付ける制度であり、人を雇うときに守らなければならない最低限のルールといえます。
また、雇用主は、6ヶ月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して10日以上の有給を与えなければなりません(労基法39条1項、2項)。
ヨッシーさんの勤務していた会社では、雇用保険、労災保険、さらには有給もなかったとのことですが、本来は許されることではありません。
会社側の「ウチはそういうの一切つけていない」との発言(文脈から社長の発言と予想します)からは、まったく法律を遵守しようという意思が見えず、雇用主としての責任感の欠如が表れているといえます。
なお、日本リーガルネットワークは、今月6日まで新たに「ブラック企業エピソード」を募集している。
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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)