日ロ平和条約に邁進する安倍首相 狙いは来年の「衆参同日選挙」か?
シンガポールでの安倍・プーチン会談をきっかけに動き出した北方領土問題。二島先行返還論には懸念する声もあるが、さらにその背景にあるものとは…。
■プーチン提案に飛びつく安倍首相
この発言には伏線があった。9月12日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの壇上で突如、同席した安倍晋三首相に「いま思いついたのだが」と前置きして、「一切の前提条件なしで年内に平和条約を結ぼう」と奇襲をかました。
安倍首相は苦笑いするのみで、まともに受け答えできずに帰国した。それから最初のプーチンとの会談で56年宣言に言及した。安倍首相は「外交のアベ」としてプーチンと23回も首脳会談を重ねながら、領土交渉の進展は一歩も前進していない。
KGB(秘密警察)出身で老獪で冷徹なプーチンに完全に足下を見られてきた。長期政権ながら、集団的自衛権の行使容認ぐらいしか歴史的偉業として残せていない安倍首相だけに、北方領土問題の進展・解決で名を残したいという焦りがあるのだろう。
総裁選の討論で北方領土問題について「リスクをとる」と明言した通り、プーチンの誘いに乗るというある種の賭けに出ようとしている。
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■山場は19年6月末の大阪G20サミット
安倍首相としては、2019年6月28日、29日に、大阪で開かれるG20サミットを、平和条約締結に向けたヤマ場にしたい考えだ。この場で北方領土問題を大幅に進展させようとしている。
安倍首相は、二島先行返還論者で北方領土問題をライフワークとしている鈴木宗男・元衆院議員と頻繁に官邸で会談を繰り返している。鈴木氏は、「安倍総理の時代でしか北方領土問題の決着はない。最後のチャンスだ。これを逃してはならない」と怪気炎をあげる。
自民党内でも「総理は宗男さんに引っ張られすぎだ」と憂慮の声があるが、安倍首相には「歴史的偉業」の実現しか眼中にないようだ。
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■領土問題を手土産に同日選?
年明けの通常国会は1月4日が招集日で会期は150日間。衆参同日選挙を可能とする日程だ。全国紙記者が語る。
「来年の参院選は、一人区は沖縄県以外で自民党が全勝したときの改選。前回は民主党の低落ゆえに自民党の圧勝でした。安倍政権のレームダック化が始まっていますし、大敗する可能性もなきにしもあらず、議席が減るのは自明です。
惨敗した場合、安倍政権の求心力が一気になくなる。そこで、安倍首相が考えているのが『消費増税再々延期』して『北方領土問題』を進展させて、衆院を解散して、衆参同日選挙にすることです。
菅義偉官房長官は慎重ですが、安倍首相は前のめりです。北方領土問題の前進で支持率が上がれば、それを争点に解散に打って出るでしょう」
北方領土問題の進展で、衆参同日選挙を虎視眈々と狙う安倍首相。そのもくろみは、はたして、成功するのか。
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(取材・文/France10・及川健二)