「3K」とも評される介護職 ブラックすぎる有料老人ホームの実態とは

高齢化社会において、なくてはならない仕事である介護職。しかし、その仕事のキツさは広く知られている。ブラックな有料老人ホームに勤務していた人の体験談だ。

2018/12/08 15:30



■無理なシフトは過労死ラインの危険も

早野弁護士:みーぽさんは、日勤だけのシフトの雇用契約だったということですので、原則として、会社側はみーぽさんの同意なく、夜勤シフトを組むことはできません。


月の残業時間の合計ついては、みーぽさんの話からは明らかではありませんが、シフトがコロコロ変わっているようですので、いわゆる過労死基準を超過していた可能性があります。


過労死についての基準は、厚生労働省によって定められているという。


早野弁護士:一般的に過労死基準は、厚生労働省の策定した「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日基発1063号)が定める残業時間の基準を指します。


具体的には、発症前1か月間に残業時間が1か月あたり100時間を超過した、または、発症前2ないし6か月間の残業時間の平均が80時間を超過した場合には、業務と発症に因果関係が強いとする基準です。


上記基準に、みーぽさんの場合を当てはめると、朝7時から夜19時までの通しというシフトが週に5日間連続であり、休みは1か月に6回しかなかったとのことですので、最大で、月275時間の勤務、約100時間の残業となり過労死基準に該当する可能性があります。


また、日勤、夜勤、朝から夜までの通しのシフトがあったことから、長時間労働だけでない業務の過重性の存在を示唆しています。


会社は労働者に対して安全配慮義務を負っていることから(労働契約法5条、労働安全衛生法3条1項)、みーぽさんの勤務シフトを調整する等して、過重労働とならないように配慮すべきであったと言えます。



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■労災補償しないことの違法性


早野弁護士:上記のような長時間労働により、みーぽさんが「私の身体はストレスでいっぱいになり、倒れてしまい入院することになっ」たということですので、業務との因果関係が認められ、業務上の疾病との評価ができると思います。


このように、みーぽさんが業務に起因する疾病で、入院した可能性が高いにも関わらず、会社が治療費の負担や休業補償を行わないことは違法な可能性があります(労基法75条等)。


とくに、みーぽさんは、業務上の過重労働が原因で休業をせざるを得なかったことから、本来なら労災保険から休業期間について平均賃金の8割の給付を受けることができました。


また会社としても、みーぽさんの疾病について労災申請を行うべきであったと考えられ、労災申請を行わなかったことは違法な労災隠しとなる可能性もあります。



■収益性と賃金バランスの難しさ

早野弁護士:みーぽさんの事例のように、介護職に従事する方々の賃金は、他の職種に比べて給与が低くなる傾向があります。


その原因の一つに、「社会保障費抑制のための介護報酬の引き下げ」があり、運営会社が収益を確保することが難しくなりつつあるということがあります。


厚生労働省としても、こうした介護職の低賃金を放置しているわけでなく、数度の処遇改善費の取り組みを行っており、現在は、勤続10年以上の介護福祉士について、月額8万円の待遇改善について検討が行われています。


なお、日本リーガルネットワークは、今月31日まで、新たに「ブラック企業エピソード」を募集している。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク

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