どれだけ働いてもすべてサービス残業 ブラック病院に苦しむ看護師の悲鳴

時間外診療や入院患者を受け入れている病院には、休みがない。看護師や医師は交替制で勤務する激務ではあるが、そのブラックすぎる実態とは…。

2018/12/12 10:00


 

■長時間労働による健康上のリスク

早野弁護士: げぴまるさんのお話によると、毎日3~4時間ものサービス残業が生じていたようですが、ここには長時間労働により健康を損なうリスクが高まる問題が潜みます。


健康を損なうもとしては、身体疾患(脳梗塞や心臓麻痺など)の例や、ストレスによる精神疾患(うつ病や統合失調症など)の例が挙げられます。 このようなリスクを測る基準として、一般に「過労死ライン」と呼ばれるものがあります。


この基準によると、月の残業時間の平均が80時間を超過する状態が2~6か月継続すると、リスクが高まるとされています(厚生労働省策定「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」(平成13年12月12日基発1063号))。


げぴまるさんの場合は、毎日3~4時間の残業とのお話から、月に66~88時間の残業をしていたものと予想され、健康を害するリスクが相当程度高まっていたのではないかと推測されます。


病院は、従業員である看護師に対して安全配慮義務を負っていることから(労働契約法5条、労働安全衛生法3条1項)、げぴまるさんの業務量を調整する等して、過重労働とならないように配慮すべきであったと言えます。


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■残業代の未払いについて

早野弁護士: げぴまるさんによると、この病院では残業はすべて「サービス残業」とのことです。基本給に固定残業代が組み込まれているなどの事情がない限り、残業代が未払いとなっている可能性が高いでしょう。


残業代は過去2年分まで遡って請求することができますので、退職してから2年経過していない場合は、今からでも請求可能です。


また、日本看護協会によると、一部の医療機関では36協定(労基法36条)を看護師と結んでいない場合もあるとのことですので、げぴまるさんの病院でも36協定が締結されていない可能性があります。この場合は、従業員に残業させること自体が違法となります(労基法32条1項)。


なお、日本リーガルネットワークは、今月31日まで、新たに「ブラック企業エピソード」を募集している。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク

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