千葉・小4女児虐待死事件 父親にアンケート結果を渡した教育委員会の対応を弁護士が斬る

学校トラブルにくわしいレイ法律事務所の高橋知典弁護士が、亡くなった児童のアンケートを親に渡した対応に怒りの緊急寄稿。

社会

2019/02/02 08:00

児童虐待
(spukkato/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

千葉県で起きた小学4年生女児の虐待死事件で、千葉県野田市教育委員会が、虐待親に子供が虐待事実を記載したアンケートを交付していたことが問題視されている。


 

■児童相談所への通告には秘密が必要

学校を含め、虐待されている児童を発見した者にはこれを児童相談所等へ通告する義務がある(児童福祉法25条)。現代の日本では、人の出入りが多く、親族や昔からの知り合いが近所に住んでいて、子供の成長を見守っているような状況ばかりではない。

このため、虐待を受けている児童を保護するためには、子供が家から出てくる場所で、気が付いてあげる必要がある。その点で、親族、地域住民、さらには必ず子供が出てきて、そこで生活をしている学校が虐待発見に担う役割は大きい。

一方で、児相は通告を基本的に秘密にする。通告の内容を開示されてしまうと、通告をする際に、通告者が虐待親から恨まれることなどを懸念して、周囲の者が通告を行いづらくなるからである。

また、反省して育て方を変えられる親も多いが、一部の親は、「人の家庭に勝手に踏み込むな」と、通告者を警戒するようになる。このため、通告を秘密にしておかないと、子供の虐待に気が付くことができる通告者から、親は隠れるように虐待を行うようになる。


 

■児童による虐待の証明は難しい

上で述べたとおり、どのように虐待が通告されたかを不明にしておければ、バックドアのように、その後も、児相らは子供の状況を継続的に追うことができる。

しかし、なぜ通告が行われたのかという流れが虐待親に発覚すれば、虐待親によって念入りに抜け道がつぶされていく。

今回の事件では、心愛さん自身が、当時8歳という年齢ながら、自らいじめアンケートに虐待について記載して、保護を求めたという。一般的に小学校低学年くらいまでの年齢の場合、自分が虐待を受けていると人に説明することがそもそも難しい。

子供は、「親に嫌われたら生活することができない」と考えており、虐待自体も「自分が悪い」と考えがちで、さらには、虐待を理解するための予備知識が少ない。

というのも、虐待を子供自身が気が付くのは中学校くらいで、友達との会話を通じて友達の家庭の親と自分の親とを比べ、自分の家庭の教育の歪さを感じて、はじめて虐待だと判断できるようになるところがある。


■アンケートを親に渡してしまったミスの大きさ

高橋知典弁護士

こうした難しさがありながら、今回心愛さんがアンケートで回答できたことは、彼女が持っているとてつもない勇気と、素晴らしい知性の結晶だったと思う。

だからこそ、そのアンケートを教育委員会が、なぜ虐待していた父親に交付したのか、まったく理解できない。

担当者は、父親の言動に恐怖を感じて渡してしまったという。親としての愛情を持ちながら、平気で子供に暴力をふるい、しかも虐待を全く悪いと思っていない親が発する怒りが持つ底知れない恐怖には、弁護士である私も何度か直面したことがある。

しかし、だからこそ、その恐怖を一人の子供に負わせるようなことは許されない。心愛さんが発してくれた大きなチャンスを、逆に彼女が追いつめられる仕打ちに変えてしまったことは、本当に大きな失敗であったと言わざるを得ない。

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(文/レイ法律事務所・高橋知典弁護士

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