『おぼっちゃまくん』『ゴーマニズム宣言』の小林よしのりが語る「平成の天皇論」

数々のヒット作を持ち、論客として知られる漫画家の小林よしのり氏にロングインタビュー。

小林よしのり

漫画家の小林よしのり氏は、天皇・皇族を言論界で語るには欠かせない重要な人物だ。『天皇論』『昭和天皇論』『新・天皇論』を上梓し、どこかの学者よりも、専門的な知識に秀でていて、エンターテインメント性に優れている。

今は新しい『おぼっちゃまくん』(幻冬舎)、『ゴーマニズム宣言』(扶桑社)、『よしりん辻説法』(光文社)、『大東亜論』(小学館)に計4本を連載するほど、活躍中の大物。

還暦を過ぎたよしりん先生が天皇について、何を語るのか。1時間30分のロングインタビューを何回かに分けて掲載する。



 

■国民と同じ目線になって畏敬の念が高まった

———平成の御代もあと一ヶ月ですが、平成という時代における天皇・皇后両陛下をどう思われますか?

小林:今上陛下は昭和の時代の戦争の惨禍を、自分が引き受けようとなさったのだと思う。沖縄に特に強く思いを寄せられたり、あるいはペリリュー島まで行かれ、海外で戦死した日本人や相手方の魂を静めようとされた。


全部昭和の時代の癒やされなかった御霊を全部、ご自身が救わなければならないと思われた。その意志・行動を、息子である皇太子殿下に継がせようとしているのではないか……と察します。


被災地慰問などで膝をついて被災者に接せられ、『形だけの権威』ではなくて、昭和までは雲上人でいなければいけない、だから、目線は必ず上からじゃなければならない。それが天皇の権威だという、そういう感覚を(昭和までの天皇は)持たれていた。


昭和天皇がよく口になさった「あっ、そう」とか「朕はそう思う」というような権威を維持するための言葉付きとか態度とかは(時代状況により)必要だったわけだ。


それが平成の御代となり、天皇陛下が普通の人たちと同じ目線で同じ言葉で寄り添われた。しかし、その方が権威が高くなってしまった。それは奇跡です。


「権威をつくるためには、それなりの態度を維持しなければいけない」という風に保守を称する人たちは思っていたから、彼らは間違っていたんだよ。「膝をつくとは何事だ」とか「被災地のおぼあさんの肩を揉むとは何事だ」とか、いちいち文句をつけていた。


まったく国民と同じ目線になっても、もっと権威や天皇陛下への尊敬心や畏敬の念が高まった。保守派がまったく想像できないことでしたね。いまだに保守派は分かっていない。


関連記事:平成の御代を振り返る 玉城デニー知事に聞く「陛下は沖縄に寄り添われた」

 

■「保守派」は独善的

———退位をご表明なさったとき、保守を称する連中は反対しましたね。

小林:天皇陛下が退位を表明されたとき、保守から「天皇はお祈りだけすれば良い」という意見が出た。「体が悪くなろうとも、認知症になろうともいいんだ。ただ、生きていればいいんだ」といったり、「天皇は死ぬまでやるべきだ」と言ったりした。


保守というけど、全然、保守じゃない。きわめて独善的ですね。彼らが立つ立場は「ロボット天皇論」なんです。「自分たちが操縦すればいいんだ」ということでしょう?


畏敬の念を持たず(天皇陛下を)まったく人として見ていない。それで、政治利用だけする。

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■保守は漸次的に変わるもの
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