京アニ火災で知る「心の支え」が簡単に壊される絶望 『聲の形』解説とともに
死者33人を数えた京都アニメーション火災。心に深いキズを負った、京アニファンは少なくないはずだ。
■今こそ作品の素晴らしさを噛みしめる
前置きが長くなってしまったが、そんな誰かにとっては取るに足りない、簡単に壊して良いものだったであろう作品の中から、記者がとくに感銘を受けた一作を紹介したい。
タイトルは『映画 聲の形』(以下、『聲の形』)。2時間の映画なので土日の鑑賞にもぴったりだ。
(なぜこのタイミングでこんな紹介をするかと言うと、闇雲に不安を煽るような記事を出すより、ただただ京アニ作品の素晴らしさを書き綴った記事のほうが、今、京アニのファンは求めている……と記すのは少々自意識過剰かもしれないが、そういう記事もあってもいいのではないかと考えたからである。
もっとも、今は作品名を目にするだけで辛い人がいるのも当然であり、それを否定するつもりは記者には一切ないことを付け加えておきたい)
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■傑作映画『聲の形』を紹介
同作は2016年に公開された劇場版アニメーション作品だ。『けいおん!』『たまこまーけっと』などを手がけた山田尚子監督による作品で、内容の深さ、丁寧かつ心に染みる映像表現が高い評価を受け、第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞など多くの賞を受賞した。
ストーリーはいたってシンプル。小学生の頃、転校生で先天性の聴覚障害を持つ女の子・西宮硝子をいじめてしまった主人公・石田将也が、高校3年生になって硝子に会いに行き、友達になって関係を深めていく物語だ。
硝子がいじめが原因で転校したあと、将也は学級裁判で犯人とされ、自分がいじめられる側になってしまっていた。
しかし、会いに行くと硝子の彼氏を名乗る、結絃が邪魔をしてきて、なかなか話ができない。そんな中、永束友宏というひょうきんなクラスメートと親しくなった主人公は、彼のアシストにより硝子とふたたび交流を持つように。
その後、小学校時代の同級生数人を交え、幼かった頃に築けなかった関係性を築き始めるが……。