亜細亜大講師が解きほぐす「NHKから国民を守る党」が国民を魅了する理由
立花孝志代表や「NHKをぶっ壊す!」といったキャッチフレーズの強さについても分析。
■他のネトウヨとの違い
———立花氏が他のネット右翼と二つの点で異なると仰っていますね。
金子:第一に、攻撃の標的をNHKに絞ったこと。もちろん、彼がNHKの元職員であったからでしょうけれども、有権者の多くがNHKと接点を持っているという事実は大きい。
在日コリアンの問題を重視する政治団体は少なくありませんが、在日コリアンと接点のない有権者からすると、全くリアリティがありません。けれどもNHKの場合、安くもない受信料を払わされています。
現在のように可処分所得が減る中で、なぜ受信料を払わされねばならないのか。あるいは、払うのは構わないが、それならば報道内容に自分の意見を反映させてほしい、また無駄遣いは止めてほしい。そういう国民の潜在的ニーズを、上手く掬い取ることができたのです。
第二に、NHK解体を訴えるだけでなく、集金人を撃退する活動を継続的に展開してきたこと。受信料の不払い運動は何度もありましたが、シールを配布するかせいぜい訴訟を提起するまでで、自宅まで押し掛けてくる集金人を追い払うことは不可能でした。
けれども、立花氏は集金人を動画に撮影してネット上に晒すという手法を編み出し、さらには集金人撃退のコールセンターまで運営しています。手法の是非については評価が分かれるところでしょうけれども、効果的であることは事実です。
その結果、一定の存在感を確立した立花氏は、まずは自らが地方議員となり、さらにはN国党の仲間を地方議員として各自治体に送り込みます(中には、地方議員となるために仲間を装った者もいるようですが…)。
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■戦略的な選挙戦
———参院選の戦い方も戦略的だと評価されていますね。
金子:今回の参議院選挙では、本命の比例区だけでなく、大半の選挙区にも候補を立てました。
これは比例区の得票を掘り起こすためで、維新政党新風など議会進出を目論む政治団体も採用した手法ですが、資金の限界もあって大都市のある一部の都道府県に限定されていました。
これに対して、N国党は全都道府県の3分の2超に当たる37の都道府県に候補者を立てました。各候補者は趣向を凝らした政見放送を凝らした政見放送を行い、有権者の関心を集めました。
とかく、政見放送における立花氏のパフォーマンスにばかり目が向きがちですが、それだけでは議席の獲得には至りません。N国党が議席を確保し得た要因や背景を考える上では、それまでの活動や選挙戦略全体に目を向けるべきだと思います。