『ばいきんまん』が日本の法律で裁かれたらどんな罪になるのか? 弁護士に聞いた

ばいきんまんが人間だったら、どんな罪に問われる?

2020/03/01 07:15

アンパンマン

数十年にわたって子供たちに愛され続けてきた、日本を代表する幼児向け作品『それいけ!アンパンマン』。アニメではほぼ毎回悪役のばいきんまんが悪いことをしてアンパンマンに退治されるが、その悪行は酷いものばかりである。

アンパンマンワールドに刑務所があったら確実にばいきんまんはムショ行き間違いなしだが、もしばいきんまんが罪に問われるとしたら、どういったものになるのだろうか?



 

■ばいきんまんには刑法の適用がされない

実際にレイ法律事務所に所属する、阪口采香弁護士に聞くと、まずばいきんまんは人でないため「刑法の適用」がされないということを襲えてくれた。以下が阪口先生が教えてくれた、詳しい解説である。

「日本の刑法は、適用の前提として、行為者が『人』であることが必要です。ばいきんまんは人ではないので、刑法は適用されません。


また、アンパンマンワールドは、公式ホームページによると、地球や日本の近くにあるとされていますので、地球や日本の中にはないものと考えられます。となると、そもそもアンパンマンワールドでの出来事には、日本の刑法が適用されない可能性もあります。


加えて、ばいきんまんは、バイキン星という、アンパンマンワールドとはさらに別の星からやってきた異星人なのです。よって、アンパンマンたちには刑法が適用されると仮定しても、ばいきんまんの行為には適用されない可能性があります」


阪口先生の言うようにばいきんまんは人間でないため罪に問われることはないが、実際にアンパンマンワールドで刑法があったとしてもそこの住人でないため、罪に問われないことを悪用して犯罪行為を重ねている可能性もあるようだ。


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■ばいきんまんが人間だったら?

しかし、もしばいきんまんが人間だった場合はどのような罪に問われるのだろうか? 人間だと仮定して阪口先生に考えてもらったところ、以下の罪状が考えられるという。

「ばいきんまんが、だだんだんやUFOに乗って他の人の花壇を荒らしたり、塀を壊したりすると、器物損壊罪(刑法261条)となります。


また、それらの手や足が街のお友達に当たれば暴行罪(同208条)ですし、それでお友達が怪我をすれば傷害罪(同204条)となります。お友達に無理やり何かを作らせたり義務のないことをやらせたりすれば強要罪(同223条)にもなりえます。


ばいきんまんが、街のみんなに運んでいる最中のお菓子やパン、野菜などを横取りすれば、窃盗罪(同235条)となります。そのための手段として暴力をふるったり脅迫をしたりすれば、強盗罪(同236条)となります。


一度奪った物を取り返されそうになり、それを攻撃で防ごうとした場合には、事後強盗罪(同238条)となります。


また、ばいきんまんが変装をして、お菓子や食べ物をもらおうとすれば、それは詐欺罪(同246条)に該当しえます。ばいきんまんはいつも悪いことばかりをしているので、相手がばいきんまんだと知っていた場合には、お菓子をあげなかったといい得るためです。


だからこそ、ばいきんまんも変装したのだといえます。もっとも、ばいきんまんの変装は、ほとんどばいきんまん丸出しであり、通常の人は騙されないかもしれません。その場合には、詐欺罪が成立しない可能性もあります。


ばいきんまんが邪魔をしたせいで野菜が販売できなくなったり、ジャムおじさんがお店で売るパンを作れなくなったりしたら、威力業務妨害罪(同234条)となります。


街の未成年のお友達を連れ去る行為は未成年者略取誘拐罪(同224条)、人質として連れ去る行為は身代金目的略取誘拐罪(同225条の2)にあたります。


刑期につきましては一概には言えないところなのですが 身の代金目的略取等罪の場合や、強盗(事後強盗含む)によって怪我をさせてしまった場合(強盗致傷罪・240条)には、法定刑として無期懲役も定められています。


罰金は、行為がいくつあったかにもよりますが、すべての行為が1回ずつだとすると、法定刑の上限は210万円となります」


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■アンパンマンは罪に問われるのか

ばいきんまんが罪に問われないことを悪用しているならとんでもない極悪人(ばいきん?)だな…と思ったが、逆にアンパンマンも毎回ばいきんまんを殴って成敗していることも気になった。そちらも罪に問われないか聞くと…

「アンパンマンにつきましては、毎回ばいきんまんをアンパンチで撃退していますが、 仮にばいきんまんには異星人として刑法が適用されない場合には、アンパンマンの行為の対象としても「人」ではないので、暴行罪や傷害罪には問われません。


仮にばいきんまんが誰か人に仕えている場合には、その人に対する器物損壊罪となるかもしれません。 しかし、アンパンマンはばいきんまんの攻撃からみんなを守るためにパンチをしていますので、緊急避難(37条)となり罰せられない可能性があります。


仮にばいきんまんも人として刑法が適用されるとした場合には、ばいきんまんに対する暴行罪や傷害罪となりますが、緊急避難や正当防衛(36条)となって処罰されない可能性がございます」


アンパンマンは正当防衛や緊急避難で処罰されない可能性があるのだという。さすが正義の味方である。確かにばいきんまんの迷惑行為を放置していたらとんでもないことになるので、当たり前の防御措置なのかもしれない。

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(取材・文/しらべぇ編集部・熊田熊男

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