俳優・宝田明が戦争の記憶と記録を語り継ぐ ゴジラに込められた反核メッセージ

「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」で宝田明が自らの戦争体験とゴジラに秘められたメッセージについて語った。

2020/08/08 12:00

宝田明

8月5日、8月6日、8月9日と都内で「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」が行われている。同映画祭は2012年から始まった新藤兼人平和映画祭が前身で、広島出身の若き女性、御手洗志帆さんが立ち上げた一般社団法人・昭和文化アーカイブスが企画・主催したものだ。

同映画祭に冠された「戦争の記憶と記録」というタイトルは、故・菅原文太さんが2013年に寄せたメッセージからとられている。



 

■ゴジラに秘められた反核メッセージ

6日にはゲストとして映画『ゴジラ』シリーズで知られる俳優の宝田明が登壇した。宝田は満州で生まれ、1945年にソ連軍が侵攻してきた満州での悲惨な少年時代の体験を語った上で、ゴジラについて次のように語った。

「昭和29年にゴジラが作られました。日本は広島・長崎と原爆を投下された被爆国家で、それから9年経って南の島でアメリカの水爆実験があって、第五福竜丸、これは八重津の方に所属している漁船でしたが、これが被爆をした。


船員たちは夕飯を終え看板の上で涼んでいてパッと西の空に太陽の数百倍の明るさを持った太陽がまた出てきたぞと船員たちは思ったわけです。その2、3時間後に死の灰が降ってきてほうほうの体で逃げ帰ってきた。


そこで、東宝は世界に向けてメッセージできるのは日本の国しかないので、空想上のゴジラなるものを登場させ、米ソの冷戦下での水爆実験の開発の闘いの中ですから、ゴジラは哀しいかな被爆者として東京湾の沖に上陸して、東京を壊滅させるような騒ぎを起こす」


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■人口の1割が見た初代ゴジラ

映画の最後、宝田演じる尾形秀人が海中に潜って、ゴジラを白骨化させるような大きな爆弾で死滅させてしまう。

宝田は、「完成試写を見たときに試写室の中でワンワー泣きました。なんで人間なんてエゴなんだろう、と。この静かに眠っていた空想上の動物とはいえ、人間が起こしたもので被爆した哀しい性・運命を持ったゴジラが何で白骨化になるまで人間に痛めつけられなければいけないのか」と当時を振り返る。

昭和29年に初代ゴジラが上映されると、当時、日本は人口8800万人だったが、そのうちの961万人、つまり人口の11%がゴジラを見たという。

2年後、ゴジラの初作品はアメリカに買われて、米国は大国意識で上から目線で、アメリカにとって都合の悪い部分は全部カットして、まるで出来の悪いパッチワークのような作品ができあがった。

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■カットされたメッセージ
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