女優・渡辺美佐子が34年続けてきた原爆朗読の終わりと憲法について語る
渡辺美佐子ら女優たちによる「夏の会」が続けてきた原爆朗読劇。今月末には長崎にて開催の予定だ。
長崎に原爆が投下されてから75年の8月9日、都内で「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」が催され、女優・渡辺美佐子主演の映画『月光の夏』『誰がために憲法はある』が上映され、その後、渡辺を招いてのトークショーが行われた。話は主に『誰がために憲法はある』に向けられた。
■「憲法くん」に秘せられた思い
井上淳一監督のドキュメンタリーである同映画は、もっともシャープなお笑い芸人と評される松元ヒロが日本国憲法を擬人化した芝居「憲法くん」の朗読と、渡辺さんが主宰する劇団「夏の会」の原爆朗読劇、初恋の恋人を原爆で失った渡辺さんの個人史の三つが下敷きになっている。
「こんにちは、憲法くんです。姓は『日本国』名は憲法、『日本国憲法』です」で始まる「憲法くん」が映画の冒頭12分、演じられた。トークショーで「憲法くん」の中の好きな言葉を問われた渡辺。
「私のことを自虐的だとか、プライドがないとか、もっと誇りを持てとかおっしゃる人がいます。私は、この70年間、たった一度も戦争という名前のついた行いで、人を殺したことも、人に殺されたこともありません。私は、そのことを誇りに思っています」という台詞をあげた。
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■憲法制定時の嬉しさ
渡辺は、憲法についても語る。
「現憲法について色々おっしゃる方もいるかもしれませんけど、本当に戦争で私たちがひどい目にあって、人間らしさを全部なくしたような生活を強いられ、戦前はそれが当たり前だと思わされてきた。
そこへ、戦争を絶対にしないよ…という憲法を、アメリカ製だか日本製だか知らないけれど、いただいたときの嬉しさは、ひどい目に遭った分だけ、ものすごく皆、喜んだ。
純粋に人間らしく生きられるんだということを喜んだその時の気持ちを忘れないで持っていたいという思いと、ちょっと最近危なっかしくなってきたな…という思いが重ね合い、決して覚えはいいほうではないのですが、12分間の『憲法くん』を暗記して諳んじることができるようになりました」