小川紗良、女優と映像作家の二刀流で輝く彼女が映像制作に行きついた理由

高校生のときに映像を撮り始めた小川紗良が映画『ビューティフルドリーマー』で、映研部員の主人公・サラを演じる。


 

■「私たちはどこに向かってるんだろう…」

小川紗良

―――エチュードで映画を撮ってしまうという製作手法を初めて聞いたのですが、いざやってみて、現場の進み方などはいかがでしたか?

小川:本番前に4日間くらい稽古期間を設けていただいて、そこで主にエチュードの稽古に取り組んでいたのですが、映研部員(のキャスト)同士も初めましてでしたし、最初はお互いのテンポ感や性格も全然わからなくて、恐る恐るでしたね。


みんな稽古中盤くらいでけっこう思い悩んで、「私たちはどこに向かってるんだろう…」みたいな(笑)。


稽古が終わっても延々と話し合って、悩んではいたんですけど、その悩みをみんなで共有したことであったり、本番の待ち時間に遊んでいたりしたことで、本当にどんどん仲良くなっていって、結果的にはそのチームワークの良さ、仲の良さで撮影を乗り越えたなって思っています。


―――稽古期間があったからこそ、自然な仲の良さが劇中でも出ていた感覚でしょうか?

小川:稽古期間でチームワークの基盤みたいなものはできたと思うんですけど、現場に入ってからのほうがより仲良くなったかもしれません。


毎日同じ場所、同じメンバーでいたので、撮影の合間に私が持っていったトランプで、ずっと大富豪とかワードウルフとかやっていました。みんな全力で夢中になって。


ワードウルフは特に言葉で探り合う、言葉のキャッチボールが必要な遊びなので、それがエチュードの質を高めていたというか、みんなの意思疎通が遊びによって培われていたような気がします。


―――もしかして、ワードウルフが意思疎通に役立つと思って、カバンにトランプを忍ばせてたんですか?

小川:その狙いもあったんですけど、単純にもっと仲良くなりたいと思って。


大学時代、私は映画サークルで、ボードゲームやトランプをやっていたので、自分の映画サークル時代を思い出して、そこをなぞるような感覚もありました。それぞれの青春をもう一回やってるようなところもあったかもしれません。


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■飛び込む度胸が身についた

小川紗良

―――エチュードで映画を撮ってみて、新しい気付きは何かありましたか?

小川:エチュードって本来は演劇とかで稽古のためにやるものだったり、ウォームアップ的なものだったりすると思うんですよ。


それを作品にしちゃうって本当に実験というか、本来はやらないことなんですけど、エチュードならではの難しさやまとまらなさ、戸惑いまでも良しとしちゃう、作品の空気感みたいなものがあったなと思って。


長回しで自分たちでやっている最中は、もっととっ散らかっていたので、よくこれがまとまったな(笑)っていうのが一番の感想かもしれないです。


―――「普通の」というと語弊があるかもしれないのですが、本来やっていた撮影方法の作品に戻ってみて、安心というかやりやすさを感じたりはしましたか?

小川:セリフがあるって本当にありがたいなと思いましたね(笑)。


でも、台本が普通にある作品でも、結局は役者同士の関係性の深め方ってすごく大事な部分で、今回セリフを取っ払ったエチュードでの撮影をやったことで、それがより大事だなと思いました。


―――どうなるのか見通しが立たない不安な気持ちからスタートした作品でしたが、結果的に「出て良かった」と思える作品になったということですかね?

小川:そうですね。何もわからないけどとりあえずやろうっていう、飛び込む度胸みたいなものはついたと思います。


 

■小川紗良が映像を作り始めた理由

小川紗良

―――小川さんご自身が映像を作り始めたのは、高校に入学したてのときの自己紹介の興味があることの項目に「映像」と何かに導かれるように書いたことがきっかけだと伺いました。

当時はなぜ「映像」と書いたかわからないとおっしゃっていたのですが、今改めて考えてみて「そういうことだったのかな」と思うような理由は見つかりましたか?

小川:映画は総合芸術だと言われますが、映像には物語もあるし、お芝居もあるし、音楽もあるし、本当に全てが一番詰まっていると思っていて。


私は元々、物づくりが何でも好きで、歌を作ったり、絵を描いたり、劇を作ったり、とにかく何かを作っている子供でした。そのいろんなものを作ってた子供が映像に行き着くのって、じつはすごく自然なことだったのかなと。


映像って作れるものがいっぱいあるので、物づくりが好きって気持ちを一番ぶつけれるというか、昇華できる場所が映画なのかなと思います。


―――今回の作品の中で、サラちゃんも同じように映像を撮っていますが、そもそもなぜ映研に入ったのかを直接的に描いたシーンはなかったと思います。演じるときに今話してくださったことを投影したのか、もしくは全く違うところから持っていったかでいうと、どちらの要素が大きかったですか?

小川:じつは、本編には使われてないんですけど、サラがなんで映研に入ったのか、なんで映画を作っているのかを話すシーンをエチュードでみんなでやったんです。そのときにサラは文化祭が好きだというような話をしていて。


それは私自身の本当の気持ちでもあるんですけど、文化祭って本当に何も利益とか見返りがあるわけじゃないし、お祭りが終わったら普通の日常に戻るわけじゃないですか?


本当に一瞬のお祭りなんだけど、そこにみんなが全力をかけていく感じというのが一番純粋な物づくりで、それがすごく好きだったなって。


映画作りって、その文化祭に向かっていく気持ちの延長線上にあると私は思っていて、それをそのシーンでも話しましたし、そういう気持ちを持ってこの作品に臨んでいました。


―――その気持ちをみんなが共有していたから、あの空気感ができたんですね。

小川:使う、使わないは置いておいて、あのシーンをみんなでやって共有してたということはすごく大事だったなと思います。


―――今話していただいたサラちゃんの気持ちを知りながら映画を観ると、また違った風に楽しむことができるのかなと思いました。では最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

小川:映研の狭い部室の中で、部員6人がずっとわちゃわちゃ事件を起こしているのですが、みんなの距離が本当に近くて、それが愛おしいって思えるような楽しい作品なので、ぜひ劇場にお越しいただいて、単純に笑ったり喜んだりしていただけたらなと思います。

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(取材・文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部

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