ドナーの新型コロナPCR検査は「偽陰性」 臓器移植中に執刀医が感染で患者も死亡

臓器移植による新型コロナウイルスへの感染について、「米国初の症例」がこのほど医学誌で明らかにされた。だが、疑わしい症例はほかにもあるという声も…。

2021/02/27 19:30

新型コロナウイルス・COVID-19・SARS-CoV-2
(画像提供:アメリカ国立アレルギー感染症研究所)

新型コロナウイルスのPCR検査の感度は、現時点で70%ほどと言われている。感染後まだ時間が浅いなど、検体中のウイルス量が測定限界値より少なければ、陰性と判断されてしまうからだ。

その「偽陰性」の問題をどうクリアしていくか、臓器移植の医療現場にとっては大変重要な課題だという。ある症例について、『NEWS MEDICAL/LIFE SCIENCE』などが報じた。



 

■交通事故で脳死の女性から…

慢性閉塞性肺疾患(COPD)が重症化し、左右両肺の移植手術を受ける以外、助かる方法はないと診断されていた米国・ミシガン州のある女性。プライバシーを重んじ、ほかの情報は明らかにされていない。

昨年秋、交通事故で脳死した女性から両肺の提供されることが突然決まり、彼女はアナーバーにあるユニバーシティ・オブ・ミシガン病院で、移植手術を受けた。

ドナーから提供された肺については、深部から採取した液体により移植前の各種スクリーニング検査が行われ、すべて問題はなく、PCR検査についても陰性との判断が下っていた。


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■3日後に発熱と呼吸困難

ところが、手術の3日後に移植患者(レシピエント)は発熱。血圧が下がり呼吸困難を訴え、新型コロナウイルスの検査をしたところ、陽性と判明した。

症状はみるみる悪化し、心機能低下も確認され、体外式膜型人工肺(ECMO)が装着されたが、レムデシビルほかの治療法は効果を表わさず、2ヶ月後に死亡。敗血症性ショックに伴う多臓器臓器不全を起こしており、救いようがなかったという。

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■術前のPCR検査では陰性
交通事故脳死判定臓器移植新型コロナウイルス陰性陽性翻訳記事偽陰性慢性閉塞性肺疾患
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