血管見つからず薬物注射が打てずに時間切れ 死刑から生き長らえた男が獄中で病死

アメリカで1946年以降、死刑執行部屋を歩いて出た3人目の死刑囚が、別のかたちで死を迎えた。

2021/12/04 19:30

刑務所・牢獄・逮捕

薬物注射による死刑執行が時間切れとなり、生き長らえた元死刑囚が健康上の理由で死亡した。『Mirror』など海外メディアが報じている。


 

■障害を抱えた強盗殺人犯

1987年1月24日、アラバマ州カルマンのアンダーソンモーテルに強盗が押し入った。夜間の受付を担当していたパトリック・カニングハムさんが銃殺され、モーテルからは350ドル(約4万円)とカニングハムさんの財布から60ドル(約7,000円)が盗まれた。

翌25日、ドイル・ハムという男が「死刑に相当する殺人罪」の疑いで逮捕された。ハムには胎児性アルコール症候群などの脳障害や、知的障害の可能性があったが、担当の弁護士からはそれらの記録が何一つ提出されることはなかったという。

この弁護士の行動が上訴審で問題となり、裁判は長期化することになった。


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■死刑執行停止の申請も

2014年、死刑囚として過ごしていたハムは、リンパ腫と診断を受け放射線療法などの治療を開始。そして2017年12月13日、アラバマ州最高裁判所は、2018年2月22日をハムの死刑執行日とする判決を下した。

しかし治療に用いられた点滴静脈注射、さらにひどく進行したリンパ腫などの病気から、ハムの腕には薬物注射に使う血管がなかった。そのため、残酷で拷問に近い死刑となる可能性があったという。

地方裁判所判事からは死刑執行停止の訴えが提出され、人権団体からはそもそも公平な裁判を受けられていないとの強い反発が起きた中で、医師が「腕はだめでも下肢の血管は利用可能」と診断したことから、死刑執行停止の訴えは退けられた。

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■時間切れによる執行終了
死刑強盗殺人翻訳記事リンパ腫胎児性アルコール症候群薬物注射
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