一見安く見える「定期購入」じつはそんなに安くない?

多くの案件を担当した弁護士に聞いた、そのカラクリの実態とは。

提供:内閣府

2022/01/07 05:00

2022年4月から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。未成年者は、原則として、契約をするにあたって親権者等の同意を得なければなりませんが、同意を得ずになされた契約は取り消すことができます。

 

■新成人は気をつけて! 通販の思わぬ落とし穴

しかし、成人になると一人で契約できる反面、原則として一方的に取り消すことはできません。そのため、新成人をターゲットにした悪質商法には注意が必要です。

近年、通信販売での健康食品、化粧品等の「定期購入」のトラブルが10~20歳代の若者にも増えています。

いったいどのようなトラブルがあるのか、実際に多くの案件を担当された、齋藤 健博弁護士に聞いた事例と対応方法をご紹介しましょう。

 

■定期購入で被害が多いのは、どのようなジャンルですか?

健康食品や化粧品が多いです。化粧品というと女性に被害が多いと思われがちですが、男性用化粧品に関する被害も少なからずあります。

 

■定期購入で、具体的にどのようなトラブルが起きているのですか?

「お試し」「1回だけ」のつもりが、実際には、定期購入契約になっていて注文した覚えがないのに2回目が届いた、途中で解約できない、そもそも電話がつながらないなどというトラブルの相談が、多く寄せられています。

例えば「ダイエット効果あり」「バストアップ効果あり」や「有名女優も使用」とうたう健康食品や化粧品の広告を見て、商品を通常価格より安い価格で購入したら、複数回の購入が条件の定期購入契約だったというトラブルが増えているようです。

 

■こういった被害に遭うのは、どのような年代の方が多いのでしょうか?

定期購入に関しては、年配の方のほうが購入している場合が多いのかもしれません。ただ、若い方からの相談もとても多いですね。

 

■消費者が気づかないうちに定期購入になる手口はどのようなものがありますか?

通信販売サイトへは、SNSの動画広告等から誘導されるケースが多く、効能や低価格が強調されています。

しかし、低価格で購入するための条件が定期購入であるにもかかわらず、小さい文字で書かれていたり、何度も画面をスクロールしないと表示されなかったりして、契約の内容を見落としやすい構成になっているんです。

申込みの最終確認画面では、初回分の商品価格のみが表示され、支払いの総額などが最終確認画面に表示されていなかったり、目立たなかったりするケースなどがあります。

また、解約・返品に関する条件が、字が小さかったり、ページ内の見つけにくい場所にあるリンク先にしか記載されていなかったり、そもそもリンクの表示がなかったりします。

(問題のあるサイトの例)

(出典:政府広報オンライン

 

■定期購入のトラブルは返品が難しいのでしょうか?

単に不良品を返品するよりも難しい場合が多いです。それに、インターネット通販は、訪問販売や電話勧誘のような不意打ち性がないため、一定期間内であれば、一方的に無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ」制度がありません。

定期購入トラブルの多くは規約などの確認不足や販売サイトのわかりにくさが原因ですが、通信販売は、「自ら商品を選び、取引条件を確認し注文している」のが前提です。

販売サイト内に定期購入であることが表示されていれば、気づかずに申し込んでしまったとしても、取引条件に納得して契約したとみなされます。

納得がいかないからといって無条件で商品を送り返したり、代金を支払わなかったりすることはできないんです。

 

■申し込む前にどんなことに注意したらいいですか?

申し込む際は、商品や取引条件等を慎重に確認しましょう。

・1回限りの購入か? 継続的な購入か?
・継続的な購入の場合、回数が定められているか?
・支払う総額はいくらか?
・解約や返品が可能か?
・解約や返品ができる場合はどんな条件か?

販売サイトや申込みの最終確認画面のスクリーンショットを撮り、契約条件を残しましょう。ウェブサイトの場合、注文後に条件等が変更され、契約した当時の条件が確認できなくなる可能性があります。

また、「特定商取引法に基づく表記」等として表示されている販売業者の住所や電話番号、責任者名など販売業者の情報をしっかり確認することが重要です。

そして少しでも怪しい、おかしいと思ったら、サイトの利用をやめ、金銭の支払いや個人情報・クレジットカード番号等の入力はしないようにしましょう。

 

■新成人がトラブルに遭わないための心構えやポイントなどがあれば教えてください

成人になると、親の同意が無くても契約を結べる一方で、原則として一方的に取り消すことはできなくなります。親権者の保護が無くなり、自分で自分の身を守らなければならないということです。

具体的な方法としては、その商品が「市場価格や想定している金額よりもだいぶ安い場合」はいったん立ち止まって考えてください。

詐欺とか錯誤は「この額で買えるのはおかしい気もしたけれど、お得と思ってつい買ってしまった」から始まる場合がほとんどなのです。

低価格を強調する広告は特に注意して下さい。注文する前に販売サイトを隅々まで確認しましょう。

 

■疑問や不安が生じた場合は、すぐ相談

「請求に納得できない」「連絡がとれない」などのトラブルが生じた場合には、すぐに消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談しましょう。

 

■「定期購入」の被害に遭わないように注意しましょう

・国民生活センター

【若者向け注意喚起シリーズ<No.3>】健康食品等の「定期購入」のトラブル-「お試し」「1回限り」のつもりが定期購入に!?-

・政府広報オンライン

成年年齢引下げ特集ページ「政府広報×東京リベンジャーズ 18解禁」

■齋藤 健博弁護士プロフィール

東京弁護士会所属。2010年に慶應義塾大学総合政策学部卒業、2013年に慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2015年に慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。

ハラスメント問題や消費者トラブル解決に携わることが多い。自身のLINE IDを公開しており、LINEでの無料相談も行っている。

(取材・文/Sirabee 編集部)

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