子供の貧困を食い止めるために 様々なアプローチで挑む日本全国のキーパーソン

子供の衣食住、そして子供の将来を守るために。

近年、日本でも深刻な状態にあるとされている子供の貧困問題。

手取り収入を指す「可処分所得」が、国民の中央値の半分に満たない状態を「相対的貧困」というが、その状況下で暮らす17歳以下の子供の割合は13.5%(※1)、実に7人に1人が該当するとも言われており、OECD加盟国の中でも貧困率(※2)が高い。

生活レベルとしては「衣食住はギリギリ満たす」というイメージだが、着るもの、食べるもの、住む場所の確保だけに日々疲弊していくと、子供が自身を肯定できなくなっていく。そして将来を見出せないことにつながってゆく。これは深刻な社会問題だ。

そんな貧困を断ち切るため、ひと息つけるフリースペースや住まいの提供を柱に、それに様々な支援を組み合わせ、衣食住を中心に子供達の支援に関する様々なアプローチを試みる日本各地の貧困対策のプロフェッショナルたちの取組について話を聞いた。

 

■空室マンションを転用して、見守り支援付き住居を提供(福岡県北九州市)

福岡県北九州市にある「抱樸(ほうぼく)」は長らくホームレス支援を行ってきたこともあり、居住支援に強いNPO法人だ。生活困窮者、高齢者、障害を持つ方への支援を行いつつも、2013年から子供と世帯への早期支援の必要性を感じ、「子ども・家族まるごと支援」というプロジェクトを立ち上げた。

「子供が困窮状態を脱するためには、その家族、特に母親への支援が必要です」

そう語るのは、居住支援事業部の山田耕司部長だ。

「ひとり親が子供のために働きづめで、食事はコンビニで食べ物を買うためのお金を渡して凌いでいた。少しでも他の子と同じようにしてあげたいとスマホやゲームは買い与える一方で、着る服は買わず住居はごみ屋敷状態、といった事例もありました。経済的には余力があっても、社会から孤立しているという意味では貧困状態といえます」 そしてその貧困下で育った子供は10年後、20年後、同じような育児を繰り返してしまう危険性があると山田さんは指摘する。

その貧困の連鎖を断ち切るために、抱樸では2018年から空室マンションを活用した見守り支援付住宅「プラザ抱樸」を開始した。地元の不動産会社や家賃保証会社と提携して、安価な家賃で入居し、支援を受けられる仕組みづくりを行っている。

「安心して暮らすことができる居場所をつくることが貧困を解消するうえでも重要です」と山田部長。

基本的には単身者向けであるが、乳児までは親子で入居も可能で、2022年2月現在、2世帯のひとり親世帯が入居している。子供が成長してもその世帯の経済状況に応じて引き続き、居住支援や就労支援など親子に寄り添い、共に歩むサポートを続けている。

全世代型の支援の一環として2013年から学習支援活動も開始

 

■一軒家を借り上げて、相談もできるフリースペースを提供(宮城県岩沼市)

居場所の確保という意味では、2011年の東日本大震災後の避難所や仮設住宅での学習支援から立ち上がった、宮城県仙台市に本部を持つNPO法人「アスイク」の活動も興味深い。

岩沼市と協働し、ひきこもり支援、学習支援事業「Hatch(ハッチ)いわぬま」を立ち上げた。市内に一軒家を借り上げ、不登校やひきこもりに悩む子供とその家族を対象にした個別相談や、自宅以外で安心して過ごせる居場所の提供を開始。

チーフを務める平泉礼さんが「地域社会のインフラになってくれれば」と願いを込めたように、小学生から中学生の利用者が平日の午後から夕方にかけて次々と訪れる。

「また(雪が)降ってきたよー」、「交差点で転んじゃった」、「明日テストだから教えてください」、「久しぶりに学校行ってみた」

そんなふうに口々に報告しながら、リラックスした様子でHatchの扉を開ける。

「仕事で遅くなるひとり親世帯のお子さんなどが、放課後の居場所として使ってくれるケースも多いです。ある利用者の保護者の方に『生活と近いところに相談したかったので助かりました』と言われたことがあったんです。それは生活の近いところに気軽に相談できる場所がなかったと解釈もできる重い言葉でした。

居場所を作って終わりではなく、何か困った時、迷った時に気軽に話してもらえるような関係性を地域内で維持していかなければと思っています」(平泉チーフ)

フリースペースの利用は、祝日を除く毎週火曜、水曜、金曜の13:00~17:00 (C)HATCH いわぬま

 

■高校生のボランティア活動が子供の未来を拓く(長野県上田市)

「僕たちもいい経験をさせてもらっているので、これを社会に出てから役立たせたいです」

快活に語るのは、長野県立上田東高校2年生、JRC(Junior Red Cross)班の依田榛葵(よだはるき)委員長だ。長野県では部活のことを「班」と呼ぶ学校が多く、JRC班とは青少年赤十字、ボランティアや福祉を中心に活動する団体だ。

彼らの活動のひとつに、市内の小学生から高校生まで幅広い子供を対象に運営する「おけまる食堂」(長野県上田市)のサポートがある。毎週火曜日と木曜日に学習支援が、木曜日は子供食堂も行われるが、その準備や配膳、清掃などを担当する。

「子供食堂ですから、基本的には子供が主体です。何か疑問や相談が必要なことがあれば『まず自分たちで話し合ってみたら?』と言います。学習支援するほうもされるほうも、食堂に来る人も迎える人も互いに学ぶものがあってほしい、それが理想です。」

子供による子供のための食堂への期待を寄せるのは、おけまる食堂を運営するNPO法人「ワーカーズコープ」上田事務所の小林みゆきさんだ。小林さんはこの活動を、上田地域における多世代間交流の拠点としても位置付けているが、その言葉どおりの効果も生まれている。

昨年末のクリスマスメニューでカレーとケーキを食べたという8歳の女児は、満面の笑顔を見せた。

「美味しかった。あと(高校生の)みんな優しかった」

その女児の母親によると、後日も「楽しかった。私は大きくなったら上田東高校に入る」と口にしていたという。貧困問題を抱える子供は、視野を広げる機会や文化的な体験に乏しく、「こんな人になりたい」というロールモデルに出会う機会が不足しがちだ。

おけまる食堂の取組は、年齢を超えた交流によって、子供が将来を描いたという好例だろう。

2021年12月のクリスマスパーティーにて。カレーとケーキが振る舞われた。

福岡、宮城、長野。土地やアプローチは違えど、子供の貧困に取り組むいずれの団体も、「貧困の現状の周知」や「子供の孤立の回避」などを共通の課題に挙げた。

また同時に、潜在的な貧困を早期段階で発見するために、訪問やリサーチといったアウトリーチ的な取組についても意欲的だった。

いずれも必要なのは多くの人に知ってもらうこと、そして問題意識を持ってもらうことだ。関心を集めるための仕掛けを設けて、そこから寄付やサポートへ働きかける道筋を作っていかなければならない。

「貧困とはただ食べ物も服も家もないことだと考えがちです。ですが、必要とされず、愛されず、気にかけてもらえないことが最大の貧困」

これはマザー・テレサの言葉だが、まずは人々が他者に興味、関心を持つことが重要になってくる。いま、社会のあり方が問われているのかもしれない。

【脚注/取材対象】

※1.厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html

※2.OECD Income Distribution Database(IDD)

https://www.oecd.org/social/income-distribution-database.htm

抱樸

https://www.houboku.net/about/overview/

Hatch(ハッチ)いわぬま

https://hatch.asuiku.org/

おけまる食堂

https://www.pref.nagano.lg.jp/jisedai/documents/documents/08okemaru.pdf

~本記事に登場する支援団体は、「子供の未来応援基金」の支援実績がある団体です。同基金 は、企業や個人の皆様から広く寄付を募る活動です。寄せられた寄付金は、公募・審査・選定 の上、支援団体の運営資金として提供され、学習支援を行う団体や子供食堂、フードバンクな ど、全国の支援団体の様々な活動に役立てられます。皆様からのご支援をお待ちしておりま す。詳しくは、下記サイトをご覧ください~

子供の未来応援国民運動

https://kodomohinkon.go.jp/https://kodomohinkon.go.jp/

また、 子供の未来応援国民運動では、 3 月 10 日(木)、 11 日(金)に「子供の未来応援フォーラム」をオンライン開催いたします。本フォーラムでは、 「子供の貧困」の現状を知り、私たちに何ができるかを考え、 具体的なアクションにつなげる場になることを目指し、講演やパネルディスカッションを 2 日間に渡り 行います 。皆様のご参加をお待ちしております。(内容の一部は、子供の未来応援国民運動YouTubeチャンネルにて後日アーカイブ配信しますので、ご利用ください。)

 

〇子供の未来応援フォーラム ~子供の貧困について考える、企業とあなたのための2日間~ (オンライン開催)

詳細、参加お申込みはこちらから:

<特設サイト>https://kodomo-miraiouen-forum.jp/

ご視聴は無料。

①Zoomウェビナー、②YouTube視聴 のどちらかをお選びいただけます。

(取材・文/竹田聡一郎・編集/Sirabee編集部 提供:内閣府)

ボランティア子供の貧困子供食堂NPO法人
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