見た者をしびれさせる“本の回廊”  「4年後に辞める」と店主が明かす理由とは

ツイッターに投稿された1枚の写真が話題に。地元でも知る人ぞ知るこのお店はなぜできたのか…。

2022/03/14 05:45



■「散歩中に見つけた」

投稿者の守屋華那歩さんがそんな「名店」に出会ったのは偶然だったという。

「3月7日に散歩をしていて見つけたんです。入った瞬間から引き込まれるような本の連続に圧倒されました。一冊一冊、透明なビニールカバーがされて、とても状態がきれいでドキドキしました」(守屋華那歩さん)。買い物した際に、店主とのやりとりで印象に残っていることが。

「お会計で1万円を出したとき、『ここに人は滅多にこないから、おつりがない』とおっしゃってました。みなさんのコメントを見ると、通り道だったのに気づかなかった、入ったことなかったなどの声があったので、存在は知っていてもお店の中に入った人は少なかったのではないでしょうか」(前出・守屋華那歩さん)。


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■「ずっと1人でやってる」

定年後にお店を開いたというが、どんな経緯があったのだろうか。「千代の介書店」店主の溝口清司(せいじ)さん(86)に話を聞いた。

「定年して始めたから20年以上になります。私は昭和11年生まれなので、娯楽といったら本くらいしかなかったので、昔から本をたくさん読んでいました。お店をやる前は、機械工や修理工とかいろいろな仕事をしたのですが、いつか書店をやろうと本を集めて、お金もためていたんです」(溝口さん)。

地道にお金を貯め、苦労して開いたとあって、本への愛着は強い。「並べるときに50音別にしたり、作家別に並べたり、1冊1冊ビニールカバーをつけています。明治や大正の本でもきれいに磨いて、書き込みも消してね。人の話は嘘か本当かわからない。本がすべて正しいことが書いてあるとは限らないけど、読書で何か想像することは大切だと思います」(前出・溝口さん)。

お店はほぼ毎日開けているという。「毎朝8時にきて、やってますよ。体調が優れないときは休むこともありますけどね。もっと若ければ誰か人を雇ってたけど、ずっと一人でやってます。だけど、90歳になったらやめようと思ってます。足腰も弱くなるし、言葉も出なくなるから。でも、そこまで働けたら十分だよ」(前出・溝口さん)。

終始、元気そうに話していたが、やはり本の話題になると、声が弾んでいた。あと4年と言わず、体が許すのであれば、いつまでも元気でやり続けてほしい。


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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人

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