三菱商事と三井物産がサハリン2に継続出資 エネルギー安全保障が脅かされる危機も

輸入するLNGの9%あまりをロシアに依存する日本 代替策がなかった日本の商社はロシアリスクを承知した上で出資継続を表明 今後どうなる?

2022/09/04 05:00

天然ガス・エネルギー資源

米中対立や台湾有事、ロシアによるウクライナ侵攻で世界情勢が不安定化するなか、日本の三菱商事と三井物産は8月までに、ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の新たな運営会社に参画する意向をロシア政府へ通知すると発表した。



 

■三菱商事と三井物産が出資継続

ロシアは先月5日までに新会社を設立して事業を移管したので、三菱商事と三井物産に対して新会社に同様の出資比率で参画するかどうかを9月4日までに通知するよう要請していた。

三井物産はこれまで12.5%、三菱商事は10%をそれぞれ出資していたが、両社とも慎重な検討を重ね、総合的な観点から判断したと発表した。


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■市民生活に直結するロシアリスク

今回の決定は両社にとって苦渋の決断だったと言えよう。純粋に海外で経済活動を行いたいのであれば、当然ながら企業としてはリスクを回避したい。しかし、リスクはあっても継続を決定しなければならない場合もある。

今回の決定はその典型例で、日本は石油や天然ガスなどエネルギー資源に乏しく、しかもLNGの9%あまりをロシアに依存しており、今回の決定の背景には日本政府からも要請もあったという。

サハリン2から三菱商事と三井物産が撤退すれば、LNG価格だけでなく、逼迫する電力需要はさらに逼迫し、電気やガスのさらなる値上げは避けられず、市民の生活水準はさらに厳しくなることが予想される。


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■脅かされる日本のエネルギー安全保障

ロシアによるウクライナ侵攻は長期化が避けられず、欧米と足並みを揃える日本とロシアの対立も長引くことになる。

しかし、今後、ロシアが日本に対して政治的揺さぶりを掛け続けることは間違いない。三菱商事と三井物産が継続出資を決定したが、ロシアが出資比率などでさらに厳しい要求を課してくる可能性も排除できない。

ロシアは日本との関係を慎重に見極め、日本国内の逼迫する電力やガスなどエネルギー事情を考慮し、対抗措置を講じてくるだろう。

台湾有事もあれば、日本へ向かい石油タンカーの航行が脅かされることになる。対ロシアや台湾有事も考慮し、日本はエネルギー安全保障を真剣に考える時に来ている。

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(取材・文/Sirabee 編集部・セレソン 田中

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