河川敷で遭遇した差別、酷すぎる内容に目を疑う… 突如現れた「5文字」に怒りの声

東京・足立区にて発見された張り紙。記された「差別的な内容」が大きな波紋を呼んでいるのだが、その真相は…。

2022/09/28 04:45


 

■この内容がなぜ「食べられた」に…

ナオクロサキさんが捨て猫および、件の張り紙を発見したのは、足立区にある「千住新橋」の河川敷でのこと。

子猫を保護した経緯について尋ねると、ナオクロサキさんは「犬の散歩で土手を毎日通るのですがある日、藪から猫の鳴き声が聞こえてきました。姿は見えなかったので藪の中を探したところ子猫を3匹見つけ、さらによく探してみると2匹見つかりました」と、当時の様子を振り返る(現地で発見したのは5匹とのこと)。

その後はたまたま現地を通りかかった夫婦らと協力したほか、動物保護団体の知人からの紹介を受け、猫の保護活動をしている人物に子猫を引き渡すなどし、猫の保護に尽力したという。

子猫

ナオクロサキさんが子猫を見つけたのが7月18日のこと。その約2ヶ月後に件の張り紙が掲出されていることに気づき、書かれた日付が自身が子猫を発見した日と同じことから「自分のことを言っているのだな」と感じ、同時に「ベトナム人が猫を食べた」という内容に疑問を感じたのだ。

足立区

その後、ナオクロサキさんは「ここに捨てられた子猫5匹は、日本人がつれて帰って保護団体の方に預けて、5匹とも里親さんが見つかったので、ご安心ください」と記した張り紙を、件の張り紙の下に掲出。

足立区

こちらのねらいについては「元々の張り紙の内容を訂正するのと、子猫を心配してる人がいるかと思いまして」と振り返っている。なお張り紙掲出の翌日、2枚の張り紙は撤去されていたようだ。


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■足立区の「過去の事件」を遡ると…

これらの事象から、張り紙に書かれた内容は「事実無根」と判明したワケだが、過去に足立区で「ベトナム人が猫を食べた」と言う事件が発生し、その影響で今回の張り紙が出現した可能性も捨てきれない。

そこで続いては、足立区役所に件のツイートおよび、張り紙の内容を確認してもらうことに。なお、東京都が公表している都内在住の外国人人口(2022年7月1日時点)を見ると、ベトナム人の人口は中国、韓国に次いで多いことが分かる。

ちなみに23区内で比較すると、最もベトナム人人口の多いのは江戸川区の2,888人、続いて豊島区の2,515人、その次が足立区の2,433人であった。

今回は「外国人が猫を食べている」または「猫を食べるために連れて帰っている」といった旨の報告・相談が過去に足立区に寄せられた背景があるかを確認してもらうことに。

通常、こうした過去の事例は2〜3年に遡ったデータを算出するのが妥当だが、法務省も公式サイトで呼びかけているように「大きな災害の発生時は偏見や差別が助長される恐れがある」のは周知の事実。

今から2年前に当たる2020年は新型コロナウイルスが「未知の病気」として非常に恐れられていた時期であり、こちらに関連して「謂れのない外国人差別」に基づいた相談が寄せられていたケースも十分に考えられるため、今回は過去5年に遡った2017年〜2022年間のデータを参照してもらう。

すると、足立区からは「猫の捕食をめぐる報告や相談は、1件も寄せられておりません」という回答が得られたのだ。なお、9月13日にはツイッターの投稿を見たという人物から「猫を捕食することに関する注意喚起を(ツイッターで)発信してほしい」という要望が1件あったそうだが、こちらが「直接的な目撃」に基づいた報告・相談でないことは明らかである。


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■そもそもベトナムでは猫を食べる?

「ベトナム人が子猫を連れ帰った」という内容が事実でなく、過去に区内でそうした事例が起こった事実もなかったことが判明。それでは「ベトナム人が猫を食べる」という点は事実なのだろうか。

ベトナム協会・常務理事を務める小川弘行氏に今回のケースを相談し、ベトナムの「猫食文化」について尋ねたところ「ベトナムには猫を食べる『文化』と呼べる風習はございません」「一部の限られた地域や、過去の事例などは定かではありませんが、現在ベトナム国内に『猫を食べる文化がある』とするのは誤りです」という回答が。

一方で「犬を食べる」人々の姿は一定数見られるそうなのだが、こちらの「犬食」には反対の声が多数上がっているほか、規制に向けての機運も高まっているとのこと。

また当然ながら「犬や猫を食べる」といっても、「外を歩いている犬猫や、他人のペットを捕まえて食べるなどの野蛮な行為は決して見られません」とも補足していた。

子猫

前出の通り、大きな災害発生時は外国人に対する差別意識が高まりやすい傾向にある。ここ日本は地震や津波をはじめとした震災・水災が発生しやすい背景があるが、そうした非常事態にあっても「根拠のない偏見」によって、他者を排除することがないよう、改めて注意を喚起したい。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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