お得誘う数字のマジック 「30%おトク」プレミアム商品券は「30%引」とは違う
【得する経済学】お得を誘う「数字」にはマジックがあります。ちょっと気を抜くと勘違いしてしまうかも。具体例で説明します。
「30%お得!プレミアム付商品券」。
これは東京・新宿区が発行したプレミアム付商品券のチラシに書かれているコピーです。みなさんの地域でもこんな感じでコロナ禍で停滞した景気浮揚策としておトク地域商品券が発売されたのではないでしょうか。
新宿区ではこの券、結構な人気で、我が家も家族全員はがきで申し込んだのですが、当たった家族と外れた家族が出てしまい、そのあたり家庭内での悲喜こもごもな格差が発生したりもしました。鈴木家では弱肉強食がルールです(笑)。
さて、今日お話ししたいのは家族紛争の話ではなく、この商品券がどれだけお得かについての話です。
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■この商品券で買い物は何%引になるの?
新宿区の商品券の仕組みは、郵便局に当たりはがきを持ち込んで1万円を払うと13,000円分の商品券を買うことができるというものです。確かに3,000円分お得で、コピーの通り30%お得であることは間違いありません。
ではこの商品券を使って買い物をしたときに、いったい何%引になったのかわかります?
「それは30%引でしょう」と思った方、ブー! 不正解です。実はこの商品券で買い物するときのお得度合は「買い物が23%引になる」というのが正しい計算です。
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■その正しい考え方とは?
考え方としてはこの商品券、「合計13,000円分の商品を10,000円で買える」券なわけです。
だったら13,000円の商品が10,000円になったのと同じですから、値引き率は3,000÷13,000で計算すると約0.23、つまり値引き率23%が正しいのです。
言い換えるとこの商品券「最初に思ったよりもお得ではないかも」という落とし穴があるのです。この計算、まだピンと来ませんか? だったらこう考えてみましょう。
「100%お得な商品券」があったとします。もしこれがあったら1万円を出すと2万円分の商品券がもらえるわけです。じゃあそれで買い物すると100%引? そんなことはないですよね。
これが正しい考え方で、1万円で2万円のものが買えたわけですから値引き率は50%引。つまり100%お得な商品券を使っても、値引は50%だけ。常にこの数字は小さくなるのですし、お得のパーセンテージが大きければ大きいほど値引き率は相対的に小さい数字になる仕組みです。
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■じつはヨドバシカメラに注意が必要!
じつはこの算数、ポイントをもらうときに気を付けたほうがいいポイント(!)でもあります。
ポイント還元制度はヨドバシカメラで始まったとされるのですが、買い物をするたびに10%のポイントがもらえます。そのポイントは次の買い物で使えるのですけどヨドバシカメラの場合はポイントで買い物をした分についてはポイントはつきません。
計算してみるとわかりますが、ヨドバシカメラで1万円買い物をすると1000円分のポイントがもらえて、それで次回買い物をすると合計で11,000円の商品が手に入ります。
ではヨドバシでの買い物は結局何%引だったのか? 合計11,000円の商品が1000円分値引いてもらった計算ですから、実は約9%引なのです。10%引ではなかったんですね。
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■お得と値引きの違いを理解しよう
まあヨドバシカメラの場合は10%と9%の違いなのでこの話を知っていても知らなくても大きな差は出ませんけれど、ここで覚えておいたほうがいいのは「30%お得」ぐらいの大きな数字になってくると「お得」と「値引き」の数字の違いが大きくなってくるということです。
プレミアムとかポイントをもらうことが増えた昨今、ちょっとした基礎知識としてこういった数字のマジックは知っておいたほうが「お得」だと私は思いますよ。
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■著者プロフィール
Sirabeeでは、経済の素朴な疑問に対して明快な解説をする経済評論家にして戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は自治体のプレミアム商品券を題材に値引き率の計算方法をお話ししました。
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(文/鈴木貴博)