突然の「ゼロコロナ政策」大転換で“感染爆発”引き起こした習近平政権の罪

【舛添要一『国際政治の表と裏』】突如撤回された中国の「ゼロコロナ政策」。習近平政権に大きな綻びが見え始めている。

2022/12/30 17:45

新型コロナ・中国での消毒風景

新型コロナウイルスは中国の武漢が発生源である。肺炎症状に苦しむ患者を診て、新型のウイルスである可能性とその危険性を警告する専門家もいたが、武漢当局はそれを無視し、必要な対策を講じなかった。そのために、感染が拡大し、多数の死者が出て悲惨な状況になるとともに、ウイルスの封じ込めに失敗したために、感染が中国全土、そして世界中に広がっていったのである。

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■武漢のトラウマに支配されたその後

この武漢の初動の失敗に懲りた習近平政権は、徹底した封じ込めを行った。それは、「検査と隔離」という感染症対策の基本に忠実な対策であり、間違ってはいない。

中世のヨーロッパでペストが流行ったときには、村全体を封鎖して、人の出入りを阻止し、周辺の村にウイルスが拡散するのを防いだのである。しかし、ベネツィアのような大都市ではそのような封鎖は物理的に不可能で、感染で多数の死者が出ることになった。


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■ゼロコロナ政策のコスト

中国のゼロコロナ政策は効果を上げ、欧米や日本が感染者増に悩んでいるときも、感染者の数は驚くべきほどに少なかった。

ただ、北京や上海のような大都市でゼロコロナ政策を実行するには、住民を強制させる能力を持つ独裁政権でなければ不可能である。そして、感染対策要員の確保、隔離中の食料品の提供など大きなコストがかかる。それに、経済活動が停まるために、経済的にも大きな悪影響を及ぼし、それは日本をはじめ世界中に及んだ。


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■国民の不満の爆発と政策転換

ゼロコロナ政策に対する国民の忍耐も限度を超え、11月最後の週末には、遂に各地でデモなどの抗議活動が起こった。「習近平退陣!」、「共産党退陣!」を叫ぶ声も聞かれるなど、国民の不満が爆発した。

それに危機感を持った習近平政権は、12月7日に急遽政策転換を行ったのである。「検査と隔離」という大原則をかな繰り捨てて、大規模な検査も止め、重慶市などは、無症状や軽症の場合は出勤しても構わないというところまで規制緩和をした。


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■感染者と死者の急増

ゼロコロナ政策の解除は、経済活動や人々の日常生活にとっては好ましいが、他方で感染者が爆発的に増えるという事態を招いてしまったのである。1日当たりの感染者が、青島市で約50万人、浙江省で約100万人というような数字が報告されている。12月1〜20日の感染者が2億4800万人という政府の推計も明るみに出ている。これは人口の約2割という多さである。

また、死者が急増して火葬場が満杯になり、火葬を待つ人の車で長蛇の列ができており、その映像は日本でも繰り返し放送されている。死者は100万人に及ぶだろうと言われている。医療の逼迫も問題になっている。

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■データが不足するリスクが高まる
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