トルコ・シリア大地震 「地震大国」日本はいまこそ危機管理の発想を優先させるべきだ

【舛添要一『国際政治の表と裏』】未曾有の大災害となったトルコ・シリア大地震。危機管理という点では防衛も防災も同じだが、日本は…。

2023/02/19 06:00

2月6日にトルコ南部のシリア国境近くで発生した大地震は17日現在、約4万3,000人以上もの死亡が確認されるという大惨事になっている。現地は氷点下の寒さであり、被災して避難した人々は過酷な状況に置かれている。

【関連記事】舛添要一氏連載『国際政治の表と裏』、前回の記事を読む



 

■現地では悲惨な状況が続いている

日本をはじめ、世界中から緊急支援チームや援助物資が送られているが、医療など様々な面で支援が不足している。

日本も、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)や東日本大震災(2011年3月11日)などの大地震の被害を受けており、他人事ではなく、今後とも十分な対策を講じる必要がある。


関連記事:西島隆弘、トルコ・シリア大地震受け1000万円寄付 「Nissyの愛が…」

 

■安全保障最優先のスイスという国

今、ウクライナでは戦争が続いているが、危機管理という点では、防衛も防災も同じである。

私は、若い頃スイスで研究生活を送ったが、このアルプスの小国はドイツ、フランス、イタリアという大国に囲まれており、いかにして国を守るかに腐心してきた。まずは中立政策で、どの国とも同盟を結ばない。たとえば、フランスと同盟すれば、ドイツから攻撃されるからである。

そして国民皆兵の徴兵制で、各人が自宅で武器を保管し、管理する。大学でも、学生が数週間いなくなることがあったが、それは徴兵されて訓練をしていたのである。大学の試験よりも徴兵が優先で、大学は追試験を行わなければならない。


関連記事:西島隆弘、トルコ・シリア大地震受け1000万円寄付 「Nissyの愛が…」

 

■『民間防衛』参考に私は『東京防災』を製作

東京防災

スイスでは、全ての過程に『民間防衛』という本が配布されている。敵が攻めてきたときに、国民はどう戦うべきか。怪我をしたら、どのような緊急治療を行うか、避難するときにはどうするかなど、防災にも活用できる情報が満載されている。核爆弾が投下されたときの対応も書いてある。

私は、都知事のときに、これを参考にして『東京防災』という小冊子を作り、都内の全家庭に配布した。
スイスでは、公共建設物にはシェルターが設置されており、そこで長期間生活できるように食料品などが備蓄されている。スイスのパンがまずいのは、収穫した新小麦は備蓄に回し、備蓄から回収された古い小麦でパンを作るからだと言われている。日本式にいうと、新米ではなく、いつも古米、古古米を食べている感じだ。

舛添要一氏新著『スターリンの正体 ~ヒトラーより残虐な男~』【Amazon】

次ページ
■高速道路=直線のスイスとカーブの日本
トルコ大地震舛添要一シリア国際政治の表と裏
シェア ツイート 送る アプリで読む

人気記事ランキング