大阪の駅前で京都・奈良がガチ喧嘩、一体なぜ… 市民は「これもう戦争だろ」と驚き

大阪の梅田駅で「京都と奈良がガチ喧嘩している」と話題に。あまりに対照的すぎる看板の内容を見ると…。

2023/04/12 04:45


首都圏の埼玉と千葉、富士山をめぐる山梨と静岡といった具合に、都道府県の中にはバチバチのライバル関係が生まれるケースも珍しくない。

以前ツイッター上では、大阪の駅前にて勃発した京都と奈良の「予想外すぎるバトル」が話題となっていたのをご存知だろうか。

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■大阪の駅前で発見したのは…

今回注目したいのは、奈良を代表するインフルエンサー「卑屈な奈良県民bot」さんが投稿した1件のツイート。

投稿には「余裕と品格溢れるデザインの京都に対し、完全に必死さを隠しきれていない奈良のアレな感じというコントラストがまた最高なのよこの広告」と意味深な1文が綴られており、添えられた写真には大阪の阪急梅田駅が写っている。

奈良国立博物館

駅外観に掲げられた広告には「京都国立博物館」(以下、京博)と「奈良国立博物館」(以下、奈良博)の看板が確認でき、京都の方は非常に落ち着いたデザインである一方、奈良は対照的にカラフル且つポップ…否、ポップすぎるデザインとなっていたのだ。


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■「これもう戦争だろ」と話題

京都と奈良は「日本が誇る古都」…と書くと対等のイメージがあるが、794年の平安京遷都以降、千年以上の長きに渡って(福原京等の例外を除く)京都は日本の中心であり続け、令和の現代でも知名度・人気共に京都が大きくリードしている感は否めない。

それ故に第三者視点では「奈良を歯牙にもかけない京都」「京都を意識している奈良」という図式が成立しているようにすら思えてしまう。そんな2府県が、大阪の駅前で対照的すぎるデザインの看板を掲げている光景を見ると、何やら胸騒ぎがしてこないだろうか…。

前出のツイートは2,000件近くのRTを記録しており、他のツイッターユーザーからは「これもう戦争だろ」「看板は目立ったもん勝ちだから、奈良の方が好きかも」「京都は余裕を感じるけど、奈良は『神社仏閣しか出せるものがないんです!』感がある」「どちらかというと、奈良が大阪に寄せてきたっぽい」「京都は景観条例の関係で、こういうデザインなのかな」などなど、様々な意見が寄せられていた。

また、卑屈な奈良県民botさんの強敵(とも)として名高い京都のインフルエンサー「みえっぱりな京都人bot」さんは、同ツイートに対して「奈良はんはえらい賑やかどすな」と、キレッキレな京都煽りを展開。

奈良国立博物館

卑屈な奈良県民botさんも「京都はんもえらい慎ましやかな広告どすなあ(半ギレ)」と応酬しており、完全にプロレスの様相である。

京都国立博物館

ちなみに卑屈な奈良県民botさんの「中の人」は2名おり、話題の写真を撮影した「ばっきーぬ」さんは看板を見て、思わず「南北朝の内乱ってまだ続いてたっけ…?」と、乱世の匂いを嗅ぎとったそう。

また「奈良県民にとっての京都」について尋ねたところ、「あくまで個人的にですが、奈良県民の私にとって京都は都も新幹線も観光客も根こそぎ奪ってゆく、目の上のタンコブみたいなものだと勝手に思っております」と闘争心あふれるコメントが返ってきた。

しかし、もう1人の中の人「あをにまる」さんは「逆に京都側からしてみれば、奈良のことなぞ目の上のタンコブどころか完全にアウトオブ眼中で、相手にもしていない気がするのは私だけでしょうか?」と冷静に分析しており、前出の質問は奈良県民にとって「永遠の命題」なのかもしれない。

件のツイートを見て、それぞれの博物館の展示に興味を覚えた人もいるかと思うが、写真に収められているのは2021年に開催された特別展の広告である。

奈良国立博物館

そこで今回は、既存の「奈良のイメージ」を良い意味でぶち壊した広告誕生の経緯について、奈良博に詳しい話を聞いてみることに。その結果、「BreakingDown」も真っ青なバトルの舞台裏が明らかになったのだ…。


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■それにしても奈良県、ノリノリである

話題のポップな看板は、21年7月17日から9月12日の間に開催された「奈良博三昧」の広告。

デザイン決定の経緯について触れる前に、奈良博の担当者は「仏教美術を見にこられるのはご年配の方々が中心となっており、以前から若い人たちにも興味を持ってほしい、という思いがございました」「しかし、デザイン性を重視した広告・ポスターにすると『仏様の尊厳を傷つけるのでは…』という意見もあり、毎度こうしたデザイン決定時には決して少なくない制約があったのです」と、同館の抱えていたジレンマについて説明する。

奈良国立博物館

そこで今回もいくつかの案を募ったところ、カラフル且つポップであり、前出の不安にギリギリ抵触しない奇跡的なデザインを発見。担当者曰く「一番ぶっ飛んだデザインでした」という案が、奈良博三昧の広告に採用されたのだ。

奈良国立博物館

とはいえ、当初は「これはどうかな…」と懐疑的な意見もあったのだが、「このアメコミ風デザインは捨てがたい」「仏像によるアベンジャーズ感を出したい」という思いが伝播していき、晴れて本決定に至ったという。

奈良国立博物館

「仏像アベンジャーズ」と聞くと、何やらふざけたイメージ(煩悩)を抱いてしまうものの、ポスターには「56億7千万年後に悟りを開く! 弥勒如来」「燃え盛る炎で煩悩を焼き尽くす! 愛染明王」など、仏たちの特徴を的確に評したキャッチコピーが添えられており、担当者は「インパクトがあるだけでなく、仏教的なPRとしても機能しております」と太鼓判を押す。

それでもやはり「仏教界からクレームが来るのでは…」と心配する関係者もいたそうだが、蓋を開けてみるとこれが大ウケ。担当者は「東大寺の方々も皆さん、大変喜んでくださいました」と振り返っており、改めて日本仏教の柔軟性とノリの良さを実感した思いだ。


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■スポンサーが「試合の仕掛け人」だった

なお、今回の広告がかなり踏み込んだデザインであったことに対し、スポンサーからも「これ本当に大丈夫ですか…」と心配の声が上がったが、気づけば彼らも「仏像アベンジャーズ」の魅力に開眼。

最終的には京博の特別展「京の国宝」のスポンサーでもある企業から「京都と奈良を対にする形で、合わせて広告を出してみましょう」と、「じゃあそこ、試合決定で」的な、ノリノリの提案があったという。

奈良国立博物館

結果として、過去に前例のないポップなデザインの効果もあってか、「奈良博三昧」には若い来館者の数が多く、特に40代以下が目立って多かったそうだ。

また、同展は奈良博の館蔵品のみで構成されたもので「展示物の写真撮影OK」という要素も見逃せない。こちらが昨今のSNS文化とリンクし、来館者が新たな来館者を呼ぶ大ヒットへと繋がったのだろう。

奈良国立博物館

ちなみに奈良博も、卑屈な奈良県民botさんの活動を認知しており、「奈良博三昧」の開催期間中に同アカウントが、特別展に関する魅力あふれるツイートを多数投稿してくれた件について、笑顔で振り返っていたのだった。

最後に訪れた奈良の思い出が「中学校の修学旅行」という人は少なくないと思うが、大人になってから改めて訪れる奈良では、当時気づかなかった多数の魅力に出会えることだろう。

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