刑事ドラマのカツ丼、「幻」になっていた…? 名シーンが消えた理由に愕然

一昔前の刑事ドラマではお馴染みだった「取り調べのカツ丼」。なぜ、最近描かれなくなったのか…。

2023/05/03 04:15

カツ丼

「カツ丼でも食うか?」。年配の刑事が容疑者に語りかけ、熱々のカツ丼を食べさせる。噛みしめるように食べた容疑者が「すみません、やったのは俺です…」と、涙ながらに自白を始める──。

一昔前の刑事ドラマでよく見られた光景だが、最近は見なくなっていて…。

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■「カツ丼」のルーツ

刑事が取り調べの際、容疑者にカツ丼を食べさせるというのは、刑事ドラマのお決まりだ。そもそも、なぜ「カツ丼」なのか。

あるテレビ局関係者は、そのルーツを語る。「1950~60年代に始まったと言われています。当時は戦後間もなく、生活が苦しい家庭も多かった時代です。今でこそ、カツ丼は安く食べられますが、当時は贅沢品だったんです。刑事が罪を犯した人に普段中々食べられない料理をご馳走する人情や優しさが、日本人の心を打ったのでしょう」(テレビ局関係者)。

「昭和の刑事ドラマ」と聞くと、こうした刑事の義理人情を思い浮かべる人も多いのでは。


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■ネット上では惜しむ声も…

ただ、昭和、平成、令和と時代が移り変わるにつれ、「取り調べのカツ丼」は少なくなった印象だ。

ネット上でも、「今の刑事ドラマは取り調べでカツ丼なんて見ないな」「犯人がカツ丼食べるシーン何気に好きだったのに…」「この前、何かの番組で『刑事ドラマでありえないシーン』って言われてた。もうああいうのやらないのかな」「刑事ドラマのカツ丼ってもう時代に合わないんか」など、懐かしのシーンを惜しむ声があがっている。


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■刑事ドラマから消えた理由は…

最近の刑事ドラマにカツ丼が登場しないのはなぜか。前出のテレビ局関係者が続ける。

「元警察関係の人などがテレビや本で、警察の内情を明かす機会が増えたためではないでしょうか。取り調べで容疑者にカツ丼を提供するのは、『実際はやらない』というのが有名になってしまいました。今、刑事ドラマでそういうシーンを描いたらネットで『時代遅れ』『作った人は何も知らないのか』など批判される恐れさえありますよ(笑)」(前出・テレビ局関係者)。

たしかに、ネットで「刑事ドラマ カツ丼」と検索するだけで、「本当はやらない」という記事や個人のブログが多数ヒットする。ここまで有名になりすぎてしまうと、いくらドラマとはいえ、描きにくいのだろう。


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■警視庁に問い合わせると…

「やらない」というのがお馴染みになってしまったが、実際に確かめる必要がある。東京都内で逮捕された容疑者を取り調べる際、警察官が個人的にカツ丼などの食事をご馳走して食べさせることはあるのか。

警視庁にこちらの疑問をぶつけたところ、「ありません」(警視庁広報)という回答だった。詳細に関しては、犯罪捜査規範第168条を参考にしてほしいとのことだったので、こちらにも触れておく。

第168条「任意性の確保」で「取調べを行うに当たつては、強制、拷問、脅迫その他供述の任意性について疑念をいだかれるような方法を用いてはならない」とされている。

さらに、「取調べを行うに当たつては、自己が期待し、又は希望する供述を相手方に示唆する等の方法により、みだりに供述を誘導し、供述の代償として利益を供与すべきことを約束し、その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いてはならない」という記述が。容疑者にカツ丼をご馳走させることは「供述の誘導」に該当する可能性があるのだろう。

「取り調べのカツ丼」シーンを今の時代に描くのは難しそうだ。

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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人

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