道に飛び出した猫、その首を見てゾッとした… 日常に潜む「凶器」に怒りの声
ジョウロが首に挟まり、抜けなくなってしまった猫に遭遇。果たしてなぜ、こうした事態が起こるのかを「日本動物病院協会」に聞くと…。
犬や猫が焦った様子を見せ、つい微笑ましい気持ちになった経験はないだろうか。しかし時と場合によっては、決して笑えない「命の危険」と呼べるケースにもなり得る。
以前ツイッター上では、道路上で発見された猫の「痛ましい姿」に、同情の声が寄せられていたのだ。
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■飛び出してきた「猫の姿」に目を疑う…
今回まず注目したいのは、ツイッターユーザー・ざっきぃさんが投稿した1件のツイート。
「今日の4時頃だったんですけど、これで道に飛び出して来て轢くかと思いました。どんな状況やねんお前」と綴られた投稿には、猫の写った写真が添えられているのだが…なんと、首から上がジョウロの「タンク」部分にジャストフィットしていたではないか。
なお、ツイート末尾には「無事外すことには成功しました」と記されており一安心。しかし万が一、心優しい人に発見されなかったら…この猫にどのような危険が生じていたか、考えるだけでゾッとして来ないだろうか。
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■「無事で良かった」と一安心だが…
前出のツイートは投稿から数日で3,000件以上ものRTを記録。他のツイッターユーザーからは「猫ちゃんが無事で良かった…」「猫に代わって御礼申し上げます。ありがとうございます」「優しい方に見つけてもらって、本当に良かったです」といった具合に、安堵する声が多数寄せられていた。
一方で「なぜジョウロを放置したのか」「置きっ放しにする人は、想像力がない」など、ジョウロの持ち主に対する怒りの声も少なからず確認できる。
こちらの光景を目撃したツイート投稿主・ざっきぃさんがすぐにジョウロを外したところ、猫は逃げていったそう。どこか怪我をしていないかが気がかりだが、猫の様子については「(健康状態は)問題なさそうでした」とのこと。
前出のツイートに対し、他のユーザーからは同様の事故を目撃したという報告も、少なからず寄せられていた。また、2021年には京都府京都市にある「ぜろの会動物病院」もこうした事例について言及。
「事故防止のためにも安全な容器に水をご用意ください。ジョウロの蓋は外しておくか、穴の無い蓋にして下さい。ご協力お願いいたします」と綴ったツイートに数枚の画像を添え、人々に呼びかけていたのだった。
「あぁまたか」
ぜろの会では7~8匹来ています。
じょうろの蓋の穴から頭を突っ込んで水を飲み、蓋ごと外れてしまう事故が以前より多発しています。
事故防止のためにも
安全な容器に水をご用意下さい。
じょうろの蓋は外しておくか、
穴の無い蓋にして下さい。
ご協力お願いいたします。 pic.twitter.com/qZSM0ptFZh— ぜろの会 (@zeronokaikyoto) April 3, 2021
そこで今回は、こうした「ジョウロ」の存在が猫にとっていかに脅威であるかを探るべく、公益社団法人「日本動物病院協会」(JAHA)に、取材を敢行することに。その結果、驚きの事実が多数明らかになったのだ…。
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■「水の入った容器」はこんなにも危険
今回の取材に応じてくれたJAHA理事にして獣医師の吉田尚子氏は、猫がジョウロを被って抜けなくなってしまう状況に対し、まず「状況によってかなり差があるため、一般的な見解としてお話させて頂きます」と前置き。
その上で「こうした猫ちゃんが見られるのは、ジョウロの中に水が入っている状況であれば、水を欲しがっていた場合があるかもしれません」「好奇心が旺盛な猫ちゃんは行動学的にも、狭いところを覗き込んだり、入り込んでしまうような行動も見られるようです」と、分析している。
つまり「喉が渇いている」といった理由以外にも、ジョウロの中の水が動いたり、水の中の小さな虫などが動いている…といった様子に好奇心が刺激され、入り込んでしまう可能性も考えられるのだ。これは、ジョウロに限らず「先の細い容器」「首がギリギリ入る直径の容器」などでも起こり得る現象である。
我々が同じような状況に遭遇した場合は、どうにかして自力でジョウロを取り外そうとするのだが…吉田氏は「猫は、人間のように上手く手が使えないので、首が抜けなくなってしまったり、入り込んで抜け出せなくなるということが起こります」と、猫と人間で決定的に異なる箇所を強調。
さらに「飼い主さんがいる状況では笑い話で済むのですが、お留守が長い場合は事故になることもありますし、猫の場合はさらに、それが高所で起こった場合には落下などではさらなる二次災害、大事故に繋がる可能性もあります」と、注意を喚起している。
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■「飼い猫なら大丈夫」は危険
こうした痛ましい事故を防ぐためには、前出のぜろの会動物病院のツイートにもあったように、ジョウロの蓋を外すなどの対策が必須。
吉田氏は加えて、「猫が首を突っ込めるようなジョウロなどの容器は、その口を下向きに置くこと」「さらに、猫が触って動かせないようにしておくこと」の2点も重要であると説明する。
こうした周辺の物体の管理は猫だけに限らず、犬などのペットであっても誤飲防止等の意味合いを兼ねて重要なのだが、猫は行動範囲(高所を含む)やリーチが広いため、安全な場所の確保にはしっかり配慮する必要があるのだ。
これらの対策を講じていても万が一、猫の首にジョウロがはまってしまった場合はどうすれば良いのか。こちらの疑問に対し、吉田氏はまず「ご自身が飼われている猫ちゃんなのかそうでないのかにも依りますが、猫ちゃん自身は目隠しされて急に閉塞されている状況にあるため、既にパニックになっている可能性があります」と、猫の立場になって状況を分析する。
そのため何より意識すべきなのは、急に近づいて猫をパニックに陥らせたり、暴れさせないこと。猫は物に包まれると落ち着く傾向が見られるため、まずは無理せずに大きめな厚手のバスタオル、布などで包むのも有効なようだ。
「外猫の場合、顔や口周り以外も、引っ掻かれると大きなダメージになることがあります。ご自身も引っ掻かれたりするケガをしないよう、動物病院に連れて行ってあげてください」とのアドバイスも得られたが…決して「飼い猫は大丈夫」と油断しないよう、要注意。
吉田氏は、さらに「慣れているお家の猫ちゃんの場合でも、こうした状況ではパニックで噛んだり、暴れることは多々あります」「私なら慣れているから安心してくれる、大丈夫、などと思わず、十分気を付けて対応してください」と注意を促していたのだ。
『くまのプーさん』のように、体がはまって抜けない光景はどこかユーモラスだが、前出のような理由もあって、猫にとってはまさに「絶体絶命」の状況である。
これからの季節はさらに気温が上がり、ジョウロの水を求める猫が増加しても何らおかしくはない。日常でジョウロや、その他水を入れる容器を使用している人は、管理の方法を今一度見直しておこう。