母が10年使用したフライパン、第2形態に目を疑う… メーカーは「奇跡が起きている」と興奮
ある日、調理を終えた後で我が家のフライパンがとんでもない状態に。キッチン用品を取り扱う和平フレイズも「初めて見た」と、驚きを隠せない様子で…。
漫画『ポプテピピック』を元ネタとするネットスラング「そうはならんやろ」をご存知だろうか。こちらの冷静なツッコミに対しては「なっとるやろがい!」と、感情的に返すのが様式美である。
なお以前X(旧・ツイッター)上では、この「そうはならんやろ」「なっとるやろがい!」を見事に体現した、奇跡のフライパンが話題となっていたのだ…。
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■「真ん中から壊れた」の真意に驚き…
今回注目したいのは、Xユーザー・所長さんによる一連のポスト投稿。
「母上が『フライパン壊れた。真ん中から…』って言うから、取っ手が真ん中から抜けたのかと思って見に行ったら…いやそれは流石に想定外だわ…」と綴られた投稿には、真っ黒なフライパンが写った画像が数点添えられている。
本文には「真ん中から壊れた」とあるが、見た限りではフライパンの中央部にひび割れや穴などは確認できない。しかし、2枚目以降の画像を見て即座に納得。
なんとこちらのフライパンは、文字通り「底抜け」の状態となっていたのである。
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■「そうはならんやろ」状態にネット民驚愕
フライパンといえば、キッチン用品の中でも耐久性に優れる印象の強い存在。そのため、フライパンがこのような状態になるのを「初めて見た」という人が大多数であろう。
実際、件のポストは投稿からわずか数日で1万件以上ものリポストを記録するほど大きな話題に。他のXユーザーからは「フライパンのこんな壊れ方、初めて見ました…」「本当に『そうはならんやろ』状態じゃん」「何をどうしたらこうなるのか、ワケが分からなすぎる」など、驚きの声が多数寄せられていたのだった。
ポスト投稿主・所長さんに詳しい話を聞くと、こちらは10年ほど使用したメーカー不明のフライパンと判明。
当時の様子については「夕食の冷凍餃子を焼いて、できあがって皿に移すまでは普通だったのですが、その後キッチンの空きスペースに置いて、暫くして見たら底がまるっと抜けていた…という経緯です」「母曰く『主力フライパン』なので、酷使するというほどではないにしても、それなりの頻度で使っていたようです。しかしカンカンに焼いた後ですぐに水に漬ける、といった使用法はしてないと思います」と、詳細なコメントが得られたのだった。
そこで今回はフライパンに起こった現象について探るべく、キッチン用品を取り扱う「和平フレイズ株式会社」に取材を敢行することに。すると、取材を依頼した記者も想像だにしなかった「怒涛の展開」が待ち受けていたのだった…。
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■「25年間で初めて見た」
前出のように、今回話題となったフライパンは「メーカー不明」の状態。そのため「御宅の製品ではない可能性が高いですが、分析の上で取材をさせて頂けないでしょうか」と相談するのは決して筋が通っているとは言い難く、断られるのが至極当然である。
だが、和平フレイズは日頃から「キッチン用品」に関するトピックにアンテナを張っていたようで、記者が取材の打診をする前より、件のポストに関心を抱いていたことが判明。
そして門前払いどころか、和平フレイズ担当者の口からは「大変興味深いケースにつき、現物をご提供頂き、その上で分析・ご回答させて頂けないでしょうか」という、予想外の提案が飛び出したのだった。
廃棄を予定していた所長さんも「渡りに船」とこちらを快諾し、かくして話題のフライパンは和平フレイズへと輸送されることに。ここまでわずか半日足らずというスピード感で、登場人物全員、完全にノリノリである。
分析の結果、和平フレイズからは尋常でない「フライパン愛」を感じさせる怒涛の回答が得られたので、順を追って紹介したい。
まず、今回見られた「フライパンの底が抜ける」という現象がいかに珍しいかについて、和平フレイズの開発部・部長からは「当社は年間、ふっ素樹脂加工の商品を約500万個販売しています。しかし25年間業務に携わっていますが、底抜けは初めてお目にかかりました」とのコメントが寄せられており、やはり相当なレアケースであるようだ。
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■和平フレイズ「奇跡が重なっている」
果たしてどのような要因が重なり、フライパンはあのように変わり果てた姿になってしまったのだろうか。
全人類の疑問に対し、和平フレイズ担当者は「ひと言で言うと『経時劣化による金属疲労による破断である』と判断できます」と断定。その上で「ご使用方法に特に問題はなく、非常に丁寧に長期に渡ってお使い頂いていたことが窺えます。内面のふっ素樹脂がお手入れにより、非粘着層(こびりつきにくい膜)が摩耗で無くなるまでお使い頂けるとは、フライパンメーカーとしては頭の下がる思いです」と、所長さんの母に敬意の念を表しつつ、説明していたのだった。
担当者は続けて、「突然のことで驚かれたこととは存じます。しかし今回の例は非常にレアケースで、奇跡的な事案が重なったものと想定されます」「根本的な原因は経時によるアルミニウムの摩耗で一部の厚みが薄くなったことに加え、加熱・冷却(膨張・収縮)を繰り返したことで起こる金属疲労による破断ですが、現品の状態から鑑みるに恐らく、ご使用後期には、底の破断した部分にうっすらヒビ状の模様が出ていたのではないでしょうか」と分析する。
所長さんからは「いつからか少し線が入っていたのには気づいていたようですが、今回底が抜けるまでは特に何事も無かったようでした」とのコメントが得られているため、この分析は正しいものだろう。
そして、和平フレイズの発見した「奇跡」の全貌についてはここからが本番である。担当者からは「既に、その部分から割れていたものとなります。ただし、外面に固着した付着物が接着剤代わりとなって支えていたため、破断せずに使用が続けられていたのです。ヒビから浸透した油分が外面まで染み出し、加熱されることで固着物となり、コールタールで固めたような役目を担っていたと考えられます」と、衝撃の事実が明かされたのだった。
思わず、手塚治虫の名作漫画『ブラック・ジャック』に登場する、医療ミスで体内に残されたメスの周囲をカルシウムが鞘のように覆い、大事故を防いだ…という、人体の神秘を感じさせるエピソードを連想してしまう。
担当者はさらに「固着物が、調理物を盛り付けたりした際に外側に回り込むと…いったように一部分だけに集中しておらず、全体に付着していることから、本品をコンロに置いたまま揚げ物や炒め物の調理など、油煙に晒される環境下(コンロに出しっぱなし)に、不使用時も出したままの時間が長かったのではないでしょうか」「最終的に加熱後、すぐに冷えたステンレス製の台の上に置かれた際の膨張・収縮が激しくなり、一部繋がっていた部分が破断し、結果として底抜けになったものと思われます」と、まるで実際に見てきたかのような説得力のある推理を披露。
そして「今回の事例の場合は微妙ですが内面と同様、外面についても調理時に付着した油汚れ等を都度洗浄し、底面の金属部分が見えるようにして頂いていれば、途中で亀裂などが広がっている様子が確認でき、驚かれる前に使用を中止できたかもしれません」「また、外面の焦げによる固着状況などから火力が側面まで回る強火で長期にお使い頂いていると思われ、フライパンにかかる熱負荷が大きかったのも一部要因としてあるかと存じます」と、解析から判明した詳細を説明してくれたのだった。
武道の達人は対戦相手の道着の着こなしを見ただけで強さが判断できると聞くが…キッチン用品メーカーはフライパンの状態を見ただけで、その家のキッチン事情が分かってしまうのだろう。
フライパンを長く、大事に使用するコツについては「(今回のケースですと)今までの使い方やお手入れにプラスし、お手入れに際しては内面と同様、使用後に食器用洗剤で油分を洗浄し、 水気を拭き取ってください。使用しないときは、他の料理を調理しているコンロの横に置きっぱなしにせず保管するなど、外面にも汚れが付かないよう予防して頂くと、長期に渡って状態良くお使い頂けます」「また火力についても、底面から炎がはみ出さない程度の中火でのご使用や、急冷をしない等をお気を付けて頂くと、より良いかと思います」とのアドバイスが得られている。
世界中のキッチンで「主戦力」として活躍するフライパン。使用の際はぜひ、和平フレイズのアドバイスを思い出してほしい。