日本一グロテスクな標識、その内容に目を疑うが… じつは「日本一優しい標識」と判明
島根県で発見された奇妙な標識。「ユーモラス且つ鬼畜」と話題のデザインの意図をめぐり、管理元に取材を行なった。
街中を歩いていると、様々な案内標識が目に入る。歩き慣れた道ほどそうした標識が「単なる背景」として映り、あまり気に留めない人も多いことだろう。
しかし以前X(旧・ツイッター)上では、一度見たら忘れられない「驚きの標識」が話題となっていたのだ…。
【関連記事】日本一矛盾した制限速度、その数値が無理ゲーすぎる 「どう走れば良いんだ」と話題に…
画像をもっと見る
■「ユーモラス且つ鬼畜」の正体は…
今回注目したいのは、道路標識マニア・りんさんによる1件のポスト。こちらの投稿には「今日は、島根の中で最もユーモラスで最も鬼畜だと思っている標識を見てきた」と、意味深な1文が綴られている。
「ユーモラス」と「鬼畜」は、相反する対極の存在に思えるが…。ポストに添えられた画像を見ると即座に納得。
なんと、そこには「カエル注意」という文言とセットで、タイヤに轢かれて「真っ二つになったカエル」が描かれた標識が確認できたのだ。
関連記事:道路標識に「くたばれ!」のメッセージ表示 酷暑で働く労働者からの抗議か
■本当の「轢きガエル」と話題に
デフォルメされたカエルのイラストは確かに「ユーモラス」だが、カエルの身になって考えると「鬼畜」極まりない、なんとも絶妙なデザインである。
こちらの標識は見た者に多大な衝撃を与えており、件のポストは投稿から数日で2,000件以上ものリポストを記録。他のXユーザーからは「潰れた後でタイヤ跡の色変わってるの細かい」「イメージのしやすさという点では効果的かも」「踏んだカエルでスリップ注意ってこと?」「これが本当の『轢きガエル』か…」といった声が寄せられていた。
なお「道路標識マニア」であるポスト投稿主・りんさんは以前より、こちらの標識を知っていた様子。
今回のポスト投稿の経緯について「標識の存在については、ネット上の情報をもとに以前から知っていました。いざ目の当たりにすると『道路の落ち葉がカエルなのでは…』と疑心暗鬼になってヒヤヒヤすると同時に生物の豊かさに感心しました」「カエルが描かれた標識がそもそも激レアですが、敢えて『既に轢かれてしまったカエル』をシンボルにする、ユーモアあふれる注意喚起の標識をぜひたくさんの人に見てもらいたく、投稿いたしました」と、振り返っていたのだった。
そこで今回は、話題の標識の詳細をめぐり、標識を管理する島根県「邑南(おおなん)町役場羽須美支所」に話を聞いてみることに。その結果、一見グロテスクな標識に込められた「意外な思い」が明らかになったのだ…。
関連記事:偽の道路標識を自作した男性 わかりにくい高速道路にイライラし…
■この道路、あまりに「本気」すぎる…
「カエル注意」の標識は、2011年12月ごろに邑南町の徳前(とくぜん)峠に設置されたものと判明。
当時の周辺の様子について、同役場の地域振興係は「島根県の農道改良工事が行なわれており、その道路沿いにニホンヒキガエルの産卵地がありました。産卵地をそのままに残すため、道路改良の計画していたルートを5mほどずらして産卵地をそのまま残し、孵化したヒキガエルが道路に出て車に轢かれないよう、高さを約1mかさ上げする工事となりました」と、振り返る。
カエルへの配慮はそれだけにとどまらず、側溝には「環境保全型側溝」と呼ばれる段差を設け、万が一カエルが側溝に落ちてしまっても側溝から抜け出しやすくしているという。また、カエルが道路を横断するための横断暗渠(水路)を設置するという充実ぶり。
そして、現地を走行するドライバーに向けて注意喚起の意味を込めて設置されたのが、今回話題となった標識なのだ。
地域振興係の担当者は「ヒキガエルの希少な産卵地が付近にあることを知らせるとともに、産卵地を保護して見守っていくことで、様々な共存ができる環境を大切にし、守る思いを育むといった願いも込められています」とも説明している。
近年は、改良された道路脇の水溜まりでのカエルの産卵は確認されていないが、数百メートル離れた水辺での産卵が確認されているという。そうした実情を踏まえ、担当者は「付近を通行する際は、注意して通行して頂ければと思います」ともコメントしていた。
デザインのインパクトに注目の集まった標識。しかし邑南町が込めた思いを知った上で再度眺めると、ほっこりした気分になってくるのは記者だけではないだろう。