エレベーターに響いたブザー音、何かがおかしい 「ブザーの概念」覆す進化に衝撃走る…
エレベーターのブザー音を聞いて「不快感」や「恥ずかしさ」を覚えた経験はないだろうか。しかし令和のエレベーターは、予想外の進化を遂げていたことが判明。
今から130年以上も前の1890年(明治23年)11月10日、東京・浅草に日本初の電動式エレベーターを設置。この出来事が由来で、本日11月10日は「エレベーターの日」と定められている。
月日は流れ、今ではエレベーターは我々の生活に「なくてはならない物」となった。今回は明治の人々が想像だにしなかったであろう、令和のエレベーターの「素晴らしい進化」について探っていきたい。
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■世の中には「恥ずかしい」と感じる音が…
空腹時の「腹の音」を筆頭に、世の中には「聞かれると恥ずかしい音」というものがいくつか存在する。
人が複数名いる場所であれば「自分から鳴った音」という特定を避けられるケースもあるが、そうもいかないのが「エレベーターのブザー音」である。なぜなら「最後に乗った人物」が一目瞭然だからだ。
これはあくまでエレベーターの「制限重量」を、他の乗客含む「総重量」が上回ってしまった…という状況であり、当然ながら最後に乗った人が特別重たい(責任がある)ワケではない。
しかし、重量(=体重)というセンシティブなトピックに関連したブザー音であるため、「恥ずかしい」と感じてしまう人は少なくないのではなかろうか。
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■ブザー音は恥ずかしい? 不快?
こちらの疑問に対しては、興味深いデータが存在する。
以前、Sirabee編集部が全国の10〜60代の男女975名を対象として「エレベーターのブザー音」に対する意識調査を実施したところ、全体の33.8%が「恥ずかしいと感じた経験がある」と回答していたのだ。
性年代別の回答を見ると、男性より女性の方が「恥ずかしい」と感じた割合が大きいことも判明している。
また「(ブザー音を)不快に感じた経験があるか」という問いに対しては、全体の30.5%が「経験あり」と回答。前出の調査結果と併せても、3割以上の人がエレベーターのブザー音に対して「ネガティブな感情」を抱いていることが窺える。
一連の調査結果をめぐり、エレベーターやエスカレーター、動く歩道の専業メーカー「フジテック株式会社」に話を聞いてみたところ、現代のブザーに関する「驚きの事実」が明らかになったのだ。
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■もはや「ブザー」と呼べないかも…
エレベーターの「ブザー音」という存在について、フジテック担当者は「注意喚起のための大切な音です」と断言。しかし「このブザー音を『不快に感じる』という利用者の声は、以前から上がっていました」とも認めている。
こうした一聴しただけで意味が分かる音は「UIサウンド」と呼ばれており、フジテックでは2020年より「聞き心地の良さ」を追求したUIサウンドを採用しているのだ。
導入までの経緯について、担当者は「聞き心地の良さと注意喚起の両立を目指す中で、特に重点を置いたのが、エレベーターの動きとの調和です」「どのような音なら利用者はドアを開くと感じるのか、逆に閉じると感じるのか、ユーザーテストを繰り返して特徴を抽出し、社外の専門家とともに音づくりを繰り返して完成しました」と説明している。
実際、記者も同社のエレベーターに搭乗してブザーを聞いてみたところ、ブザー独特の唸るような音は全くしなかった。むしろアンビエント・ミュージックの楽曲内で使用されている音のような、一種の心地良さを感じたものだ。
もちろん単に聞きやすい音、というだけでなく「エレベーターは何かを知らせたいのだ」という点は直感的に理解できる機能性をしっかり兼ね備えており、なんとも不思議なサウンドである…。
なお、ブザー音を「不快に感じた経験」に関するアンケートを年代別の結果で見ると、10〜30代は比較的「経験あり」の割合が小さいのだが、40代以降は世代が上がるにつれて「経験あり」の割合が増大。現代の洗練されたブザー音と比較すると、昔のブザー音は「耳障り」に感じる人が多かった…という仮説を導き出せないだろうか。
今回の取材に際し、フジテックからは「100人の利用者がいれば100通りの意見・感想があるはずですから、その一つひとつをないがしろにせず、『人にやさしく、誰もが使いやすい』商品を追求してまいります」と、同社の探究心を現したような、真摯で前向きなコメントが得られている。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。