『SANABI』プレイレビュー、巧みなシナリオと美麗なドット絵でサイバーパンクで新たな金字塔を打ち立てた作品
練られたストーリーがヤバい! 主人公の娘ちゃんが最高にかわいいサイバーパンクアクション『SANABI』遊んでみました。
Sirabee読者の皆さまこんにちは、ゲームボーイで音楽を作ったりしている系VTuberの幽霊坂ゆらぎです。
今回はサイバーパンクな街並みをワイヤーフックで飛び回るアクションゲーム『SANABI(サンナビ)』をクリアまでプレイしたレビューをお届けしたいと思います。
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■口コミの評価がスゴい
本作はWONDER POTIONが開発し、韓国のパブリッシャーである株式会社NEOWIZからSteamとNintendo Switchで11月9日にリリースされた2Dアクションプラットフォーマーです。
全編美麗なドット絵+サイバーパンクの組み合わせに発売前から期待感はあったのですが、発売から口コミで大きな話題となり、Steamでは記事執筆時点で12,000件以上のレビュー数と「圧倒的に好評」の評価を獲得しています。
私自身も本作を最後までプレイした結果、間違いなく自分の中の「記憶に残る一本」になるだろうなと感じたので、まだエンディングの余韻冷めやらぬ状態ですがレビューしたいと思います。
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■ハイテンポなゲーム体験
本作のジャンルである「アクションプラットフォーマー」について耳馴染みのない方もいると思いますが、平たく言えば2Dマリオのようなもので、足場(プラットフォーム)をぴょんぴょんと飛び移るタイプのアレです。
このジャンプアクションに加えて敵との戦闘があるのですが、いずれも一つ一つのパートは1、2分程度で終わるため、ストーリーも含めて非常にテンポが早い作品となっています。
ただ、本作は個人的には「全てにおいて90点以上で、シナリオに関しては200点」だったので、ハイテンポなアクションゲームの合間に、超気になるストーリーパートが挟まれる、という方がしっくりくるかもしれません。
しかも「ストーリーを楽しみたいけどアクションは苦手」という人のために、各ステージではリトライポイントがこまめに設置されており、落下死するたびにステージの最初から遊び直す必要はありません。
また、難易度選択でイージーモードを選択すればHPが減らないので、雑魚とのバトルや一部の強力なボス戦の難易度はグッと下がるでしょう。プレイヤー目線の細やかな気配りもバッチリです。
さらには上級者向けのハードモードやRTA向けのタイムアタックモードも用意されているので、ゲーム配信などではスタイリッシュなアクションで視聴者を魅せるのに向いてそうですね。
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■フックを使ったアクションは多彩
さて本作の主人公ですが、腕に義手として装着された巨大なチェーン付きフック、いわゆる「グラップリングフック」を天井や壁などに打ち込んでを高速移動することが可能です。
グラップリングフックを使ったアクションゲームといえば、かつてカプコンのアーケード作品『バイオニックコマンドー(トップシークレット)』にジャンプの代わりとして採用され話題となりました。
他にも『メトロイド』シリーズにグラップリングビームが登場したり、最近では『SEKIRO』『アメイジング・スパイダーマン』などにもワイヤーアクションが採用されるなど、重力の制約を無視したような爽快アクションは古今を問わず人気のようです。
そして、このフックの真骨頂は敵とのバトルにあります。なんと本作には攻撃ボタンというものがないため、バトルはすべてこのグラップリングアクションを通じて行うことになるんですね。
小型の敵は巨大なアームで捕まえるだけで破壊できますし、捕まえた敵を弾除けにして移動したり、空中の敵にフックを引っ掛けて多段ジャンプに活用したりと、捕まえた後のアクション内容は多彩です。
そのためバトルが単調にならず、後半になっても「せっかくフックで戦うなら、こういうのほしいよね」という機能が続々追加されるため、最後まで新鮮な気持ちでプレイできます。
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■超ハードボイルドな世界観と気になるストーリー
本作の主人公は周囲から「将軍」と呼ばれる人物で、かつては伝説的な活躍を収めながらも、現在は人里離れた山の中に引きこもって娘と平和に暮らしている退役軍人です。
プレイヤーはそんなパパのことが大好きな娘ちゃんの相手をしながら、崖の上の木苺を取りに行くなどのお使いを通じて操作チュートリアルをこなすことになるのですが、この娘ちゃんがまぁとにかく超かわいい。
本作のグラフィックスは美麗なドット絵で構成されているのですが、この娘ちゃんが喜怒哀楽全ての感情にアニメーションが作られているのかと思うくらい、終始ちょこまかと動き回るんですよ。
ただ、幸せな時間はそう長くは続かず、この後主人公は軍に戻ってとある任務に就くことになります。人物なのか組織なのかも不明な、謎のキーワード「サンナビ」を追って…。
そこから先の展開は超がつくほど硬派で、「朝廷」が治める「朝鮮」を舞台にしたサイバーパンクSFという、今までにありそうでなかった世界観がお話を一層魅力的に仕上げています。
特に、一企業にして巨大なハイテク都市を支配する巨大コングロマリット「マゴ社」を巡る陰謀は、そのあまりにデカすぎるスケールと物量でプレイヤーの心を押しつぶしにくると同時に、絶対に最後まで目的を完遂するぞという気持ちにさせてきます。
ボス戦は毎回映画のラストシーンのようなドラマティックな展開で、私が「これはそろそろラスボスかな?」と思っていたボスはまだまだ中盤だった、なんてこともありました。
ネタバレは避けますが、本作では時折、グリッチノイズとともに主人公の内面世界のようなものも描かれますが、これが非常に不穏な演出で、プレイヤーを不安にさせてきます。サンナビとはいったい…うごごご!
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■自分の目で確かめてみろ!
『SANABI』は非常にハイレベルでまとまったゲームなのですが、あえて小さな不満点を述べるとしたら、後半は追加された機能によって操作ミスが起こりやすいのと、その上で一発即死トラップが多くなるところでしょうか。
一部ステージはイージーモードを使ってもリトライ地獄に陥ってしまったので、「気になるストーリーの続きが見れない」ことへのフラストレーションはその分溜まりやすかったです。
言い換えればそれくらいシナリオが本当よく出来ていて、ここで私が何か言ってしまうと、これからプレイする皆さんの体験を損ないかねないくらい素晴らしいんですよね。
あえて言うとしたら、すべてが終わってゲームを閉じた時、『UNDERTALE』のPルート(Gではない)や、『洞窟物語』でカーリーブレイスを背負って血塗られた聖域を脱出した時のように泣けましたね…。
そのあたりからも名作特有のスメルを感じ取ってもらえたら嬉しいです。
私の中ではすでに、すべりこみで入ってきた「ゲーム・オブ・ザ・イヤー2023」といっても過言ではないのですが、あまりハードルを上げ過ぎてもなんですので、少しでも気になった方はこのレビューを忘れて遊んでみて下さい。
その時は皆さんがどう感じたのか気になるので、是非私にも感想を聞かせて下さいね!
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(文/Sirabee 編集部・幽霊坂ゆらぎ)