大阪→北海道の長旅、ANAの神対応がサプライズすぎる 「世界一優しい搭乗券」に称賛の嵐
北海道の水族館で、なぜか飛行機の搭乗券を発見。ワモンアザラシのミゾレくんに宛てたANAの粋な対応に、称賛の声が寄せられている。
■海遊館が「我が子同然」に育てたアザラシ
いいなぁ、こういうの pic.twitter.com/FUMkBIjtII
— musca@WILD・LIFE (@musca_zoolife) March 27, 2024
2021年4月1日、海遊館で初めて誕生したワモンアザラシが、話題のミゾレくん。
海遊館の担当者は「誕生直後に低体温、低血糖などが見られたため、飼育員が取り上げて『完全人工哺育』で育てることとなりました」と、当時の様子を振り返っている。
ワモンアザラシの完全人工哺育は国内初の試みであり、情報の無い中、ゴマフアザラシの人工哺育時のデータや、他園館でのワモンアザラシの繁殖・成長の記録を参考に、飼育員が24時間付きっきりで取り組んだという。
愛情をたっぷり受けて成長したミゾレくんは人の手で育てられたこともあり、警戒心が強いワモンアザラシにしては「人懐っこい」性格の持ち主。
担当者は「2021年8月の展示デビュー以降、お客様の方へ自ら近づいていくなどの行動を見せることで人気が高まり、ミゾレに会うためにはるか遠方からお越しになられる方もいるほどでした」と説明しており、その人気ぶりが窺えるというもの。
なお、ワモンアザラシの国内飼育数は非常に少なく、飼育園館数は3園館のみ(「日本動物園水族館協会」加盟に限る)。そのため野生個体を導入することなく展示を継続するには、複数の園館が協力した繁殖への取り組みが必須となる。
そうした背景があり、現状の飼育個体数や性別、血統などを考慮し、ミゾレくんをおたる水族館へ「ブリーディングローン」(繁殖を目的とした動物の貸し借り)として搬出することになったのだ。
そんな「我が子同然」に育てたミゾレが飛行機で飛び発つ当日、伊丹空港での積載手続きの際、カーゴに貼られていたのが件の搭乗券である。
海遊館の担当者は「ANA様からは事前に聞いていませんでしたので、まさにサプライズでした。温かいお心遣いに搬出スタッフ一同、とても嬉しくなりました」と、当時の心境を振り返っていた。
また「誕生当初は命の危険もあったミゾレですが、飼育員の懸命なケアや、ミゾレ自身の生きる力にも助けられ、今こうして元気な姿を見せてくれることをとても嬉しく思います。ミゾレにとっては新天地での生活となりますが、将来のワモンアザラシの光となってほしいと願っています」「お客様におかれましては、当館時代からのファンの方々が早速、おたる水族館様へ会いに行ってくださったと伺っています。これからもミゾレを応援頂けると嬉しいです」と、我が子のさらなる成長を期待する、親心の感じられるコメントも寄せられている。
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■おたる水族館に慣れてきたミゾレくん
ミゾレくんが伊丹空港から飛び発つ当日、現地ではおたる水族館の飼育員も立ち会っていたという。
担当飼育員は「ミゾレ輸送の当日にANA Cargo様でミゾレの引き渡しをした際に搭乗券を頂き、ミゾレが本当にたくさんの方に応援されていることを実感しました」「ANA様のご厚意でせっかく作って頂きましたので、公表せずに保管するのは勿体ないと思い、館内に掲出させて頂きました」と、振り返っている。
「引っ越し」から4ヶ月を経て、ミゾレくんも周囲の環境にだいぶ慣れてきたようだ。
担当飼育員は「海遊館様のプールより気温も水温も低く、ミゾレが今まで経験したことのない温度だったので、耐えられるように体重も増やして4kgほど重くなりました」「お客様も『大きくなった』とおっしゃっていて、魚をたくさん食べている姿に安心されたようです。先日の誕生日イベントもたくさんのお客様がご来館されて、ミゾレの3歳を祝って頂きました」と、ミゾレくんの近況について語ってくれた。
なお、ミゾレくんの人気はワールドワイドで、同館のSNSには外国語でのコメントも多数寄せられているのだとか。
担当飼育員は「海遊館様でミゾレに会いに行かれていた方の中には、北海道という遠い立地にも関わらず、既に何度も会いに来られている方もいらっしゃいます」「なかなか会いに来られないという方にもミゾレが元気に暮らしていることをお伝えするために、今後も情報発信をしていきますので、チェックしていただければ幸いです」と、ミゾレくんのファンへ向けた温かいコメントを寄せてくれた。
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■ANA「荷物としてでなくお客様として」
続いては、話題の搭乗券の詳細についてANA広報部に話を聞いてみる。
搭乗券を発行した経緯について、ANA担当者は「ANA大阪空港 貨物郵便サービスの社員が、海遊館の人気者として多くのお客様から愛され、海遊館の飼育員の皆様が愛情を込めて大切に育てているミゾレくんのことを知り、『荷物(貨物)としてではなくお客様同様、搭乗頂きたい』という思いから搭乗券を作成いたしました」と説明する。
じつはミゾレくんが飛行機に乗る数週間前、ANAでは秋田県に「キタイワトビペンギン」を輸送しており、その際に他社員が搭乗券のタグを作成した実績が。こちらを参考に、ミゾレくんの搭乗券作成に至ったそうだ。
担当者は「(搭乗券やメッセージには)海遊館から遠く離れた北海道まで長旅をするミゾレくんに、無事に到着してほしい、北海道でも元気に育ってほしいと、応援する思いを込めております」ともコメントしている。
ミゾレくんの引っ越しが単なる「動物の輸送」とならなかった背景には、多くの人々の優しさや思いやりが存在していたのだ。4月1日に3歳の誕生日を迎えたばかりのミゾレくん、これからも愛情をたっぷり受け、元気いっぱいに育ってほしい。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力と機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)