得なのは「PayPay決済」か「クレカ払い」か? “見栄”のせいで選択誤ったポイント還元の落とし穴

【得する経済学】お金を支払う瞬間は、大人にとって見栄を張る瞬間でもある。その支払い時に起きた失敗エピソード。

2024/04/14 05:00


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「お支払いはこのカードでお願いします」──。

一瞬の躊躇の後に財布を開いて黒いカードを取り出しました。この時の小さな判断ミスがその後、大きな損失につながりました。

ちなみに今回の失敗エピソード、その後、ルールが変わったことで全く同じ失敗が起きることはもうありません。しかし「見栄で失敗」という意味では、ひょっとすると皆さんにも今後、似たことが起きるかもしれません。教訓を込めて私の失敗の話をしたいと思います。

それは以前もお話ししたPayPayステップの話です。QRコード決済のPayPayはひとつ前の月の支払い回数と支払額に応じて、翌月のポイント還元率が変わります。今回お話しするケースは、月末近くにあと2万円支払えばOKというタイミングで見栄を張って失敗したという話です。

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■コンサルタントとして見栄をはる瞬間とは

私の職業は人と会うのが仕事です。クライアントだけでなく、情報交換目的で常に誰かと会う日々です。その日は月末のちょうど4日前。東京・六本木にある某高級ステーキハウスである人と会食をしていました。

若い読者の方は共感できないかもしれませんが、私のような昭和世代は80年代のサブカルとして「見栄講座」の洗礼を受けています。「見栄講座」とはホイチョイプロダクションが『ビックコミックスピリッツ』に連載したオトナの立ち居振る舞いを指導する当時のベストセラー本でした。

その教えに沿ってわたしたち昭和世代は、重要な相手を一見ゴージャスに見えるリストランテなどに招待し、そこでオトナの振舞いをする作法のようなものをいまだに大切に引きずって生きています。見栄が大切なのです。


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■ゴージャスなお店での支払いの作法

前菜が2皿、メインは柔らかいテンダーロインステーキと進み、デザートとコーヒーを味わう頃合いで私は、「今日の支払いは私が」と口にします。

オトナの作法ではお誘いした方がその日の会食の費用をもつ、これがビジネスの作法になっています。

問題はその支払いの方法です。最近ではほとんどのお店でPayPayが使えて、この高級ステーキハウスも御多分にもれずPayPay決済が可能なのです。が、問題がひとつふたつあります。まずこのようなゴージャスなお店では支払いはテーブルチェックになります。

お会計をお願いするとギャルソンが恭しく伝票を黒いフォルダーに挟んでテーブルまで持ってきてくれます。私はそれを受け取り、ちらりと金額を確認します。この時、一瞬でも驚いた顔をしてはいけません。平然と金額を確認するとおもむろに財布からカードを取り出してギャルソンに手渡すのが通常のルーチンです。


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■見栄を張るなら「カード払い」がいい

これをPayPayでやる場合、その場でギャルソンに「すみません。支払いはペイペイで」と私が言い、ギャルソンは「わかりました。それでは恐縮ですが一緒にクロークまでお越しください」と答え、その後、テーブルから少し離れたレジのあたりで「ペイペイ!」というあの声が店内に響き渡る展開になります。

この「ペイペイ!」という音声は見栄の観点でいかがなものか? 私の心にわずかな躊躇が起きました。

そこで一瞬の判断で、私は財布からPayPayカードを取り出したのです。PayPayカードは表側を見るとPayPayカードだとわかりますが、裏側を見るとブラックカードに見間違うという利点があります。テーブルの反対側の相手にはカードの裏側が見えるように取り出したそれをギャルソンに手渡したのです。


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■旧ルールの落とし穴に見事にはまって自滅

この時、私が瞬時に頭の中で計算していたことは「月末まであと4日間」という時間でした。

PayPayカードの支払いでも月10万円以上の支払い条件に該当するのですが、飲食店からVISAを経由してカード会社へ情報が伝わるまでに3日ほどのタイムラグがあります。4日あれば今回の支払いもカード会社に伝わるだろうと思ったのです。

そうしてその夜、私は優雅に支払いを済ませ、ホテルのエントランスで相手をタクシーに乗せて見送ると、「わたしは地下鉄で帰りますから」とドアマンに断って六本木を後にしました。

さて月が替わって確認したところ、今回の支払い……結局間に合いませんでした。おかげでそれからの一か月はPayPayのポイント還元は1%しかつかなくなりました。あ~あ、見栄を張らなければよかった。

このシステム、今年3月からは月10万円を超えたかどうかの判定は、支払った日がその月内であれば翌月に届いた支払いでも反映されるようにルールが変更になりました。この件では今後、同じ失敗は起きなくなりました。

ただ教訓は「見栄にはお金がかかるものだ」ということですね。


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■著者プロフィール

鈴木貴博

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。

今週は「クレカ払い」をテーマにお届けしました。

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(文/鈴木貴博

鈴木貴博新著『「AIクソ上司」の脅威 2030年、日本企業の序列がひっくり返る』【amazon】

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