小3娘の宿題、担任の採点が酷すぎると話題に 文科省は「小学校で指導しない範囲」認める

小学3年生の娘の宿題「18÷0」に対する教師の反応をめぐり、ネット上で波紋。数学のプロは「お子さんの回答が正しい」、文部科学省は「学習指導要領に無い範囲」と説明する。

2024/07/16 05:15


 


 

■「0で割ると0になる」と覚えると悪影響が…

こちらの疑問に対し、森山氏は「すぐに思いつく弊害としては、小学算数や中1数学で学習する『反比例』の指導です」と例を挙げる。

同単元では「y=(決まった数)÷x」という関係が成り立つとき、「yはxに反比例する」と呼ぶことを小6算数で学習し、小6時点ではxは正の数の範囲、中1になるとxは負の数の範囲まで含めて学習する。

さて、ここで一度「y=6÷x」のグラフを見てみよう。

小6で学習するのはグラフの右上範囲だけだが、中1になると図のグラフ全体を学習する。同グラフは「y=6÷x」という関係式を成り立たせるようなxの値をyの値をペアにして点を無数に打っていった結果、滑らかな曲線が描かれる…というもの。

反比例グラフ

しかし、もしも「●÷0=0」と認識されていた場合、どうなるだろうか。

この場合「y=6÷x」という関係式でxの値が0になると、yの値も「6÷0」で0ということになってしまう。そのため、xの値もyの値も両方とも0になるような点、つまりx軸とy軸の交点で「O」と表している場所を通る必要がある。

しかし実際には反比例のグラフは、記事内の図のように「Oを通らないグラフです」として学習するため、「数字を0で割ったら0である」と信じていた場合、矛盾が生じてしまう。

弊害はこれだけでなく、森山氏は「高校数学では『aを実数としてxの方程式 ax=1を解け』といった問題が参考書に載っています。この問題は、単に両辺をaで割って『x=1/a』としてしまう誤答が多いのです」と、さらなる例を挙げる。

続けて、「この解法が誤っているのは『両辺をaで割るという操作は、そもそもaに当てはまる数が0の場合は不可能なのに、そのことを注意せずに両辺をaで割っていること』が理由となります」と説明。

つまり、こちらも生徒が「数字を0で割ることができる」と認識していた場合は破綻してしまい、正しい学習が阻害されるケースが十分に考えられるのだ。


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■「かけ算と混同している」説が浮上

さて説明が長くなったが、これらの条件を踏まえた上で、森山氏は「『18÷0』という問題を宿題として出してしまった以上は『こたえなし』を正解とすべきで、『0』ははっきり誤りであると考えます」と断言。

ゼロ除算

「割り算に0が入ると全て0になる」というコメントについては「先生が、割り算とかけ算と混同している可能性があるのではないかと拝察します。0×▲も、■×0も、どちらも0ですから」と、推測している。

今回話題となったポストを受け、多くのXユーザーからは担任教師に対する非難の声が上がっていた。しかし、ポスト投稿主・ちゃーろーさんには教師を非難する意図は全くなく、苛烈な内容のリプライに心を痛めていた様子。

森山氏も同様の考えのようで、「もちろん学校の先生たちも、我々のような塾の先生たちも人間ですから、完璧を目指していながらもミスをしてしまうことがあります」「しかしながらこのとき、指導者がミスを頑として認めなければ余計に問題が拗れてしまい、結果的に大きな損に繋がってしまいます」と語る。

そして「起こってしまったことは残念ですが、ミスはミスだと認め、指導者も子供たち共にレベルアップしていければ、長い目で見て得なことが多いと感じます」と、教育者としての矜持を感じさせる、懐が深いコメントを寄せてくれたのだ。

取材に協力してくれた「あすなろ学院」は宮城県仙台市・多賀城市・名取市・富谷市に10教室を展開し、40年以上に渡って地域に密着しながら、小学生から高校生までを指導する総合進学塾。

その実績は確かで、今回の取材でも、高校の途中から理系科目を断念した根っからの文系人間である記者を相手に、親身になって非常に丁寧な指導を行なってくれたのだ。興味がある家庭は、ぜひ我が子の学習について相談してみてはいかがだろう。


 

 

■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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