観光地に置かれた大量のお金、その理由にギョッとした 観光客の「謎ルール」が招いた結果は…
宮崎県日向市の観光地で発見された注意喚起のプレート。その内容に「逆効果では?」と、多数のツッコミが寄せられている。
■一部観光客の「マナーの悪さ」判明
— Race (@JbFkl) May 25, 2024
「クルスの海」は日向市役所から約13kmの距離にある観光スポット。2004年3月28日に、今回話題となった展望所が竣工されたという。
その詳細について、日向市の担当者は「柱状岩が波の侵食で東西200m、南北220m、高さ10mにわたって裂け、十文字(クルス)に見えることから『クルスの海』と呼ばれています」「十字に割れた岩の外に小さな岩場があり、合わせると『叶』の字に見えることから、ここで祈りをささげると『願いが叶う』と言われています」と説明する。
こちらの展望所には訪れた人物の心を清め、願いや希望を天に託すための象徴として「願いが叶うクルスの鐘」を設置している。
演歌歌手・水森かおりが楽曲『日向岬』の大ヒットを祈願して記念樹を植樹したり、日向坂46の4期生ティザームービーが撮影されたスポットでもあり、これらを経由して存在を知ったファンも少なくないだろう。
当初から現地に金銭が置かれるようになったワケではなく、取材担当者は「2015年の担当職員に確認したところ、当時は現地にお金が置かれていなかったと認識しておりました」と説明する。
2008年、恋愛成就にまつわる日向市「クルスの海」、延岡市「愛宕山」と美郷町「恋人の丘」の3箇所を結ぶ観光ルート「ひむかラブラブプロジェクト」を設定。
ほか2箇所に「鍵かけツリー」が設置されていることから、当初はクルスの海にも南京錠がとり付けられたようだ。しかし、担当者は「鐘を鳴らす紐を無理矢理ほぐし、願いを込めた南京錠を付けてそのまま打ち鳴らすため、オブジェ本体が次第に損傷してしまいました」と、当時の様子を振り返っている。
こちらの事態を受け、日向市は紐を交換して南京錠を付けられなくするよう方針を転換。この頃から、現地に金銭が置かれるようになったという。担当者は「南京錠を付けられなくなった代わりの、願いを込める気持ちの形としてお金が置かれるようになったのではないかと推察します」ともコメントしていた。
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■勝手に作られたジンクスのせいで…
突然金銭が置かれるようになった事態について、日向市は「置かれているだけのお金は遺失物との判断もできるので取り扱いに苦慮し、警察に相談しました」と振り返る。
そして、2017年より「願いが叶うクルスの鐘」台座、および鐘を鳴らす際の足下の目に付く場所に件のプレートを設置することに。「おかないで」と書かれた場所にわざわざ置かれている…ということで、改めて「意図があり置かれた金銭」(遺失物でない)であると認識されるようになったのだ。
寄付金として受け入れるための使用目的を明示したワケだが、担当者は「プレート設置により(金銭の)置かれる頻度が少なくなったり、反対に施設整備のための寄付が増えたということは特段無いようです」と、現状を説明する。
そして「プレート設置後もお金が置かれることはあり、置かれている状況を見た方がさらにお金を置いていく状況となるので回収頻度を増やしたいのですが、一度の回収で100円に満たない程度の金額である一方、現地は市役所から遠く、燃料費・人件費が寄付金額を上回るため、頻繁には回収できない現状です」と、市が抱えるジレンマを語ってくれたのだ。
プレートの今後の方針について、担当者は「今後もお金が置かれることがあった場合のため、使用目的の明示はしなければなりません」と前置き。
その上で「置かれる金額的に、より活用しやすいよう、『観光施設の整備や維持管理の費用』という文言を『観光推進の目的』へと変更させていただきます。ただし寄付を目的としたプレート設置でないことをご理解頂きますよう、お願いいたします」とのコメントを寄せてくれたのだ。
本ケースが市のジレンマを生んだ要因は、大きく2点あると考える。即ち、観光客が「観光地に金銭を置く」というルールを勝手に作り出した点と、その金額である。
実際、日向市の担当者も「話題になったことで寄付が増えますと、人目につかない場所であることから盗難の可能性があります。ですがカメラの設置等は難しく、回収も頻繁にできないため、お金を置くことはご遠慮頂くとありがたいと考えております」「プレートでなく募金箱等を設置することはより高額が貯まる恐れがあり、前述の理由から予定はしておりません。寄付につきましては管理面において適切な対応が困難であることから、ご遠慮頂きますようお願いいたします」と説明していたのだ。
一方、今回のポストで「クルスの海」をはじめとする観光施設の設備や維持管理の費用に注目が集まった件はポジティブにも捉えているようで、担当者は「話題のXポスをと確認のうえ、皆様のお気持ちは大変ありがたく受け止めております。この機会にぜひ日向市にお越し頂き、楽しんで頂ければ幸いです」とのコメントも得られた。
観光地にて「ご利益がありそうだから」「せっかくの記念だから」といった理由で、一風変わった願掛けが行われるケースは決して珍しくない。だが、それが「観光客の勝手に考えたジンクス」であった場合の後始末は、施設の管理者が被ることになる点を肝に銘じておきたい。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)