7割超がスイッチの電源ON、真逆に覚えていたと判明 実は◯の意味は「マル」ではなく…

スイッチの記号の「電源オン」を、7割以上の人が「◯」と勘違いしていると判明。日本規格協会は「丸ではなくゼロ」と説明する。

2024/09/05 04:45



■50年前が初版の規格、収録されていたのは…

日本規格協会は、1945年12月に標準化および管理技術の開発・普及・啓発などを目的に設立された団体。

同団体を中核とする日本規格協会グループ(JSAグループ)は、日本の総合的標準化機関として、日本産業規格(JIS)、国際規格(ISO・IEC規格)、JSA規格の開発、JIS規格票の発行と販売、国際規格・海外規格の頒布、多彩なセミナーの提供、ISO 9001やISO 14001をはじめとする各種マネジメントシステムの審査登録、各種サービスに関する認証、マネジメントシステム審査員などの資格登録、品質管理検定(QC検定)といった多様な事業に取り組んでいる。

いわば国内における「規格のスペシャリスト」なのだ。

そんなJSAの担当者は、今回の調査結果を見て「お探しの図記号は『IEC 60417 DB 機器・装置用図記』に含まれる『○と|』と思われます」と回答。

この『IEC 60417:2024 DB』とは、電気・電子機器・装置等に表示するための図記号を収録した規格で、1973年(昭和48年)に第1版が発行され、2002年からは「データベース規格」として新しい図記号が逐一追加され、継続的にメンテナンスが行われているのだ。

なお、同規格はIECの公用語である英語およびフランス語で記載されているが、参考として対応する日本語訳を含んでいる。

2024年現在では約1,450件もの図記号が登録され、利用されているのだ。その『IEC 60417 DB』は、「IEC/SC 3C(機器・装置用図記号)」という委員会によって開発され、幹事国は日本、議長は中国が担当しているという。

IEC 60417 DB

そして73年発行の第1版に収録された170余りの図記号を見ると…その中には「電源ON」を意味する「|」と、「電源OFF」を意味する「○」の記号が確認できたのだった。

そして「|」に関しては、「向きに依存する」との説明が確認できる。これは当然ながら、図記号の向きを変えると「別の意味を表す図記号になってしまう」ということ。

今回の場合、図記号「|」を横にして「-」と表示すると、「電源ON」ではない意味を表す別の図記号になるため、ONを表すには「|のまま使うように」という内容を示唆している。

では我々も日常で目にするスイッチの「-」の記号は、国際的な規格ではどのような意味を有しているのだろうか…?


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■「-」をめぐる衝撃の事実判明

IEC 60417 DB

『IEC 60417』では「-」の名称を「マイナス、負極、陰極」と定めており、「電源」に関する記載は一切見当たらなかった。

そして、JSAの担当者は「IEC 60417を引用される場合は、図記号の使い方などを示す記述事項も参照されることをオススメいたします」「電気、電子製品の『ON』を表す記号としては、ISOおよびIECが共通で、IEC 60417-5007を使うことになっております。国内では対応JISはないため、IEC 60417-5007をそのまま使うことになります」とも補足していた。

スイッチ

つまり、我々が日常的に目にするスイッチの「-」はISO、IEC、JISにおいては誤用であり、「|」を使用するのが正しいのだ。

スイッチ

なお別の機会にて、選択肢を「○」と「|」に変更して同様のアンケート調査を実施したところ、やはり「○がオン」と認識していた人が多数であった。

スイッチ

しかし「|がオン」と回答した人物の割合は、26.3%(「-がオン」と回答したのは15.3%)と判明。多くの人にとって、-よりも|の方が「電源オン」としての印象が強いのだろうか。

スイッチ

今回の取材に際し、JSA担当者からは「これを機会に『○』はオフを表し、『-』ではなく『|』がオンを表すことを広めて頂きたいです」との要望が届いている。


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■「|こそが電源オン」という根拠が…

IEC 60417 DB

さて、「本来は-でなく|こそが電源オン」という考え方を裏付ける図記号が存在する。

それこそがIEC 60417-5007「電源ON」とIEC 60417-5008:「電源OFF」とを組み合わせた、IEC 60417-5009:「Stand-by」なのだ。「○」と「|」が融合したこちらの記号は、読者諸君も見覚えがあることだろう。

スイッチ

こちらの詳細について、JSAの担当者は「ニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションにIEC 60417-5009:が入った際の記事によると、『IEC60417-5009:は初期のバイナリスイッチの言語から合成されたもので、I(いち)とO(ゼロ)でそれぞれ閉回路(デバイスのオン)と開回路(デバイスのオフ)を示していた』とのことです」と説明する。

つまり、この記述から考えると、IEC 60417-5007「電源ON」は、回路が閉じて線が繋がりスイッチが入っているときの「1(いち)」に由来する縦線を、IEC 60417-5008:「OFF」は、回路が開いているのでスイッチが入っていないときの「0(ゼロ)」に由来する丸を表していることになるのだ。

さらに、MoMAの記事では、IEC 60417-5009:について、「巷では『パワーシンボル』と呼ばれている」との記載が。

JSAの担当者はこちらについて触れ、「実際、IEC 60417-5009:がMoMAのコレクションになった2015年頃、この図記号の名称『Stand-by(待機)』に『パワーシンボル(電源記号)』という別名を追加するかどうか、という議論あったようです」と説明する。

スイッチ

だが結果的に「パワーシンボル」は追加されず、同図記号は正式名「Stand-by(待機)」のまま、今日に至るという。

また、JSAの担当者は「リンゴの形に似たIEC 60417-5009:『Stand-by』図記号は、PCの電源表示や、電源を切るためのアイコンとしてもディスプレイ上で使われれているため、ご覧になったことがあることでしょう」「IEC 60417の中でも、最も有名な図記号と言えるかもしれません」とも補足していた。

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これまでスイッチのオンオフに自信がなかった人も、今日から自信を持って操作しよう。そして願わくば、「-」ではなく「|」こそが正しい電源オン、であることを覚えてほしい。


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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

【調査概要】
方法:インターネットリサーチ
調査期間:2024年7月20日~2024年7月25日
対象:全国10代~60代男女590名 (有効回答数)
調査話題家電スイッチ規格日本規格協会
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