50年前の炊飯器、炊飯前に「皆していたこと」に耳を疑う 何かのジョークと思いきや…
米と水を入れるだけで簡単に炊飯できる現代。しかし40年以上前は、炊飯前に「30分の追加作業」が必要だったのをご存知だろうか。
■たった10年でこんなに進化するのか…!
1981年(昭和56年)、マイコンによる自動火加減調節ができる炊飯ジャー第1号が誕生。
従来の製品との違いについて、タイガー魔法瓶の担当者は「それまでは、必ずお米を30分以上浸水してから内なべをセットし、炊飯をスタートさせる必要がありましたが、マイコンによりその工程が不要になりました」と、説明する。
これまでは「30分以上の浸水」という手順を踏まなかった場合、米の中まで吸水ができないため、米の芯まで熱が伝わらず、ご飯が上手く炊けなかったのだ。
しかし、マイコンでは40~50℃の温度で自動でお米に水を吸わせた後、初めは強火、沸騰したら火力を弱めるなど、火加減を調節して美味しいご飯が炊けるように。
令和の我々が現在当たり前のように使用している炊飯器は、この時代に雛形が誕生したのである。
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■「レトロ復刻」で再現したのは…
しかし、人間とは複雑な生き物。たとえ「昔気質」と呼ばれようと、技術の進歩によって手間がかからなくなっていく作業に寂しさを覚えた経験はないだろうか。
これは、電子書籍でなく紙の本を買い続ける人の一定数が「紙ならではの温かさ」を感じている点に、非常によく似ていると考える。
そしてなんとタイガー魔法瓶では、40年前に消えたはずの「米の30分以上の浸水」という工程を必要とする炊飯器を、令和の現代に販売しているのだ。
2023年、タイガー魔法瓶創立100周年を記念して発売された「レトロ柄復刻シリーズ」である。
その詳細について、担当者は「スイッチボタンは1つ、ランプも炊飯・保温の2種類のみとシンプルなつくりで、昭和の時代を感じさせる電気式の、機能も形もコンパクトな3合炊きジャー炊飯器です」と説明する。
国内では70~80年代に販売され、現在はアメリカを中心に海外で販売されているモデルをベースにしたそうだ。
なお、当初は「外観のみレトロで昨日は最新型」という構想があったようだが、液晶とレトロ柄がミスマッチであると判明。そこで、現在のようなデザインが採用されたのだ。
人類は「進歩」や「便利」によって、様々な作業をシンプルにしてきた。しかし時には、過去に切り捨てた「手間ひま」と向き合うことで、見えてくるものもあるかもしれない。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee編集部・秋山 はじめ 取材協力/タイガー魔法瓶)
対象:全国10代~60代男女718名 (有効回答数)