60分で「海のバカヤロー!」都内から302円の旅が楽しい
「旅に出たい!」
しばしば耳にする言葉である。自ら口にしたことがある人も多い言葉だろう。ただし、いざ実行しようとすると事情がそれを許さないものだ。
主な事情は「金」「時間」。とはいえ金はなんとかなる。その気になれば借金という手もなくはない。 しかし「時間」はどうだろうか。
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■旅に出たいが時間なし
アンケートサイト「マインドソナー」を用いての調査によると「旅に出たい!しかし時間がない」という人の割合は約63%。
年代別では若年層ほど「時間がない」と訴えている反面、50代の数値は約44%と低くなって半数を割り込む。 いずれにせよ、旅に時間を割く余裕がある人は限られているようである。
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■では近場なら?
そもそも「旅」とは、まだ見ぬ土地の風物に触れたい好奇心を満たす手段というイメージだ。好奇心を満たすことが目的なら、近場を訪ねて「旅」としゃれこんでみるのも悪くない。
たとえば「海芝浦」駅。横浜市内の駅だ。品川から京浜東北線で20分ほどの「鶴見」駅から発車する鶴見線の「海芝浦行き」に乗り換えて向かう。
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■横浜のローカル線へ
海芝浦の「芝浦」とは、電機メーカー・東芝の前身「芝浦製作所」のこと。海芝浦行きの電車は、東芝の工場へ向かう通勤客・用務客だけを運ぶ目的で運行されてきた。
鶴見線は、横浜市内とは思えないほど運行本数が少なくローカル線並み。通勤時間を除くと駅にも車内にも人影はまばらだ。海芝浦には10分ほどで到着する。
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■「海」だけに出会う旅
ただし電車を降りても行く場所はない。駅舎に見えるのは東芝工場のゲートに過ぎず、通り抜けようとすると守衛からストップがかかる。例外はなく、工場の撮影すら禁止されている。
ICカードでの乗車の場合は、車掌がホームにある黄色い簡易改札機を案内してくれるだろう。タッチすることで、海芝浦駅までの運賃を支払える。続いて緑色の改札機へタッチすれば、引き返すための乗車手続は完了である。
ホームの真下は、海。対岸の埋め立て地との間に横たわる「京浜運河」だ。
工業地帯だから風情はないものの、広々とした風景に向かって「海のバカヤロー!」と叫びたくなる人もありそう。水は意外に澄んでいて、小魚の群れが泳ぐ様子も見える。
駅構内には、ここを訪ねてはみたものの行く場所がない「旅人」に配慮して東芝が設けた公園がある。名称は「海芝公園」。短い遊歩道と飲み物の自動販売機くらいしかないが、ありがたく利用させてもらおう。
海芝浦へは、急に思い立って都心を出たとしても1時間ほど。品川からの運賃は302円(紙の切符は310円)で済む。
「隣の駅で下りて、街をぶらぶら探検する」
「自宅から遠いほうのコンビニで買い物する」
同様に、いつものテリトリーから一足伸ばしてみる行為を「旅」だと考えてみてはどうだろうか。
わずかな時間と金で、旅心すなわち好奇心を思いのほか満たすことができるかもしれない。
(取材・文/しらべぇ編集部・前田昌宏)