メタノール入り密造酒が出回るインドネシア 大量死亡事故が続発

2016/05/22 05:30


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※画像はYouTubeのスクリーンショット

インドネシアは、国民の大半がイスラム教徒である。だからといって国内で酒が飲めないというわけでもないが、日本より入手が難しいというのはたしかだ。

ビールはともかくとして、ワインや蒸留酒といったものはそれ相応の税がかけられている。従って安いワインでも米ドル換算で50ドル、というような状態だ。首都ジャカルタの最低法定賃金が200ドルをようやく越えたという国で、50ドルの買い物は非常に高い。

だがそれでも、「酒を飲んで楽しみたい」と考える人は一定数存在する。


■得体の知れない「瓶の中身」

現在、インドネシア国内で社会問題になっているのが密造酒だ。いや、「密造酒」と言えばまだ格好がつくが、要は薬局で購入した混合アルコールを蒸留して作ったという代物だ。この国では、酒よりも工業用アルコールのほうが遥かに安い。

そうした危険な液体を有名ブランド酒の空き瓶に詰め、売り飛ばしてしまう。中には殺虫剤を混ぜる例もあるそうだ。

そしてインドネシア人は、友達を集めてパーティーを開くのが好きな人々だ。酒を飲む時も、必ず徒党を組んでいる。そのため、密造酒による中毒事故は一度に十数人という数の死者が出てしまう。


■かつては日本でも

そうしたことは、戦後すぐの日本でもあった。終戦直後の貧しい環境下で、やはり誰かが混合アルコールを手に入れて代用酒を作っていたという。その混合アルコールとは、メタノールとエタノールを混ぜたものだ。メタノールは人体にとって有害で、飲むと失明の恐れもある。

だがよく考えれば、メタノールはエタノールよりも沸点が低い。ということは、混合アルコールを70℃くらいで蒸留すればメタノールが分離するのではないか…と考えた人物がいた。

結論から言えばこれは間違いで、メタノールとエタノールの水溶液は共沸混合物だから「蒸留で互いを分離させる」ということはできない。そうした化学の知識のない人間が、無責任な密造酒を平気で売りさばいていたのだ。


■取り締まりの効果

インドネシアでは、さらに酷い例がある。この国には「アラック」という、米とヤシの樹液を使って作る蒸留酒がある。悪質な酒造業者は、製造コストを下げる目的でアラックにメタノールを加えるのだ。

このようにして発生した大量中毒死が、現地の紙面を賑わせたこともある。もちろん、インドネシア政府は密造酒の取り締まりに必死だ。だがその効果は疑問符のつくものであり、依然密造酒は巷に流通している。

今この時も、危険な蒸留酒による死者が出ているかもしれない。

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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一

インドネシア取材
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