黒人少年射殺の銃がオークション出品 驚愕の落札価格に世界は唖然
2012年2月、アメリカのフロリダ州サンフォードで17歳の黒人少年トレイボン・マーティンが、地元の自警団員ジョージ・ジマーマンに射殺される事件が発生した。
「トレイボン・マーティン事件」と呼ばれるこの事件。口論の末の出来事とはいえ、トレイボン少年は丸腰だった。だがジマーマンはその後警察の尋問を受けただけで逮捕されず、刑事裁判でも無罪の判決が出された。
音楽界の巨人スティービー・ワンダーは、これに抗議してフロリダ公演を取りやめてしまったほど。
そしてこの事件が、さらなる動乱の炎を生み出している。トレイボン少年を射殺した拳銃が、当事者の手によってオークション出品されたからだ。
■銃とプレミア
どんなものにもプレミアがつく。日本でも「千利休が使っていた茶碗」が売りに出されれば、恐るべき高値がつくはずである。
銃も同じである。ワイアット・アープやデイビー・クロケットが使っていた銃ならば、その落札価格はオークションの主催者も予想できない。こうした「記念銃売買」は、アメリカでは非常に盛んだ。
ジョージ・ジマーマンは、自らの手で凶器をオークションに出品した。結果、トレイボン少年を殺した銃は25万ドルで落札された。
■南部に広がる「オープンキャリー法」
無実の少年を殺した銃をコレクションする。怨霊信仰を持つ日本人の精神性から見れば、まさに「理解不能」とも言える行為だ。
だが肝心なのは、アメリカ人にそうした怨霊信仰はまったくないという点、そしてジマーマンを「権利を行使した正義の人」と見なしている市民が少なからず存在するということだ。
アメリカの南部州には「オープンキャリー法」というものがある。これは銃を剥き出しにした状態で携帯できる権利を保証した法律だ。全米ライフル協会を始めとした銃規制反対派にとって、オープンキャリー法は「人権尊重の法律」である。
たとえば老婆が体重100kgの屈強な男に襲われたとする。もちろん素手では男に対抗できない。だが拳銃を携帯していれば、老婆でも男を射殺できる。これは言い換えれば「男女平等」であり、「自己の生存権を守る」ということ。
そうした視点で見れば、ジマーマンはたしかに「正義の人」ということになり得る。
■もしあの人が大統領になったら……
ちなみに、次期大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏は銃規制反対を明確にしている。全米ライフル協会からの支持を取り付け、「市民に銃は必要だ」と叫ぶようになった。
彼が大統領に就任した場合は銃規制の緩和はあっても、厳格化の方向へは絶対に動かないだろう。
このように、アメリカの銃問題は非常に根深く社会に食い込み、オバマ大統領ですらもその解決策を見出だせていない。残念なことではあるが、今日明日にでも第2のトレイボン・マーティン事件が発生しても不思議ではない。
アメリカという国は、「世界最大の弾薬庫」という表現すらできるのだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)